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第4章・立ち上がったのは史上最凶の悪役令嬢。
04誰だ貴様は。
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でもここ半年間のお嬢様からすれば、今のお嬢様はずっと正常だし正当だ。
自分で立って歩いて能動的に行動して状況に即した発言をされている。
半年前の出来事と半年間の逃亡生活を考えれば、このくらいの変化はあって然り…………なのか?
「どうしたの……? じろじろ熱い視線を……、ああ、やっぱり脱いだ方がいいの? とんだ助平野郎ね、あなたは……」
疑問をめぐらせながら見つめていた僕に、お嬢様はそう言いながら衣服のボタンに手をかける。
「いやいやいや! 着ていてください! 申し訳ございませんでした! 決して不埒なことは考えていません!」
僕は慌てて否定をしてそっぽを向く。
「ははは、ジョークよ。第一あなたはこの半年間私の裸体を拭いてくれていたんでしょう? 今更互いに恥ずべきところじゃあないわよ」
嬉々としてお嬢様は言う。
か……からかわれたのか、僕は。
しかし本当に、おかしい。
お嬢様はこんな冗談を……いや決してユーモアがないわけではなかったのだけれど、こういうセクシャルな雰囲気のユーモアを出すタイプの人間では……。
心神喪失から戻ってややハイになっているのかもしれない。
「じゃあ買い物に行くわよ。ノワール」
どぎまぎする僕を気にせずにお嬢様は立ち上がる。
「……何をお求めでしょうか」
僕は直ぐに切り替えて、先んじてドアを開きながら問うと。
「煙草」
スカートのポケットに手を入れてふてぶてしく、予想外の品を述べた。
お嬢様を連れて潜伏中の裏町で買い物を行った。
行動を共にできるというのは大きい、お嬢様を常に視界に入れておけるのでいつもよりゆっくりと日用品などの買い込みも行えたのはありがたい。
今まではどうしても可能な限り急いで、お嬢様から目を離す時間を極力減らさなくてはならなかった為に充実した買い出しは行えなかったのだ。
まあそれはそれとして。
これは一体なんなんだ?
買い物から帰って来たお嬢様は、煙草くゆらせながら今日の新聞を熟読している。
一応言っておくと、この国において違法な薬物を取り締まる法律はあるけど煙草や酒は特に年齢などによる規制はない。
ただどちらも子供の口に運んではならないものとして周知されているし、良くないものとされている。
貴族でお嬢様くらいの年齢の者なら嗜む方もいるのかもしれないが、昨今の医療推進の流れを受けた健康志向でティーンエイジャーの喫煙も良くないとされ、お嬢様の通っていた学園でも園内での学生の喫煙は禁止されていた。
僕の子供の頃、故郷にある診療所の先生や道場にちょこちょこ来てた助手のお姉さんも煙草を吸っていたので別に喫煙趣味というものに嫌悪や抵抗は特にないのだけれど。
でもお嬢様は……。
まあ何が言いたいのかと言えば、僕が知る限りお嬢様は煙草を嗜む趣味はなかったはずなのだ。
屋敷の使用人の中には何人か喫煙する者はいたが、旦那様も奥様もお酒は嗜んでいたものの煙草の趣味はなかった。
そもそもお嬢様の人生に、煙草が登場する機会はほとんどなかったはずなのである。
じゃあ何故、お嬢様はふてぶてしく鼻と口からゆらゆらと煙を漏らして見事なまでに煙草を嗜んでいられるんだ?
……いや、そんな。
荒唐無稽な考えが一瞬だけ頭を掠め、掠ったところからじわじわとその考えが頭に広がって、あっという間に染め上げる。
あるのか? そんな馬鹿なことが。
僕は緊張で浅くなった呼吸を整え、半身に構えて軸を通して脱力し、重心をいつでも動かせるように指先とつま先にまで気を巡らせて。
「…………誰だ貴様は」
その馬鹿なことを、言った。
自分で立って歩いて能動的に行動して状況に即した発言をされている。
半年前の出来事と半年間の逃亡生活を考えれば、このくらいの変化はあって然り…………なのか?
「どうしたの……? じろじろ熱い視線を……、ああ、やっぱり脱いだ方がいいの? とんだ助平野郎ね、あなたは……」
疑問をめぐらせながら見つめていた僕に、お嬢様はそう言いながら衣服のボタンに手をかける。
「いやいやいや! 着ていてください! 申し訳ございませんでした! 決して不埒なことは考えていません!」
僕は慌てて否定をしてそっぽを向く。
「ははは、ジョークよ。第一あなたはこの半年間私の裸体を拭いてくれていたんでしょう? 今更互いに恥ずべきところじゃあないわよ」
嬉々としてお嬢様は言う。
か……からかわれたのか、僕は。
しかし本当に、おかしい。
お嬢様はこんな冗談を……いや決してユーモアがないわけではなかったのだけれど、こういうセクシャルな雰囲気のユーモアを出すタイプの人間では……。
心神喪失から戻ってややハイになっているのかもしれない。
「じゃあ買い物に行くわよ。ノワール」
どぎまぎする僕を気にせずにお嬢様は立ち上がる。
「……何をお求めでしょうか」
僕は直ぐに切り替えて、先んじてドアを開きながら問うと。
「煙草」
スカートのポケットに手を入れてふてぶてしく、予想外の品を述べた。
お嬢様を連れて潜伏中の裏町で買い物を行った。
行動を共にできるというのは大きい、お嬢様を常に視界に入れておけるのでいつもよりゆっくりと日用品などの買い込みも行えたのはありがたい。
今まではどうしても可能な限り急いで、お嬢様から目を離す時間を極力減らさなくてはならなかった為に充実した買い出しは行えなかったのだ。
まあそれはそれとして。
これは一体なんなんだ?
買い物から帰って来たお嬢様は、煙草くゆらせながら今日の新聞を熟読している。
一応言っておくと、この国において違法な薬物を取り締まる法律はあるけど煙草や酒は特に年齢などによる規制はない。
ただどちらも子供の口に運んではならないものとして周知されているし、良くないものとされている。
貴族でお嬢様くらいの年齢の者なら嗜む方もいるのかもしれないが、昨今の医療推進の流れを受けた健康志向でティーンエイジャーの喫煙も良くないとされ、お嬢様の通っていた学園でも園内での学生の喫煙は禁止されていた。
僕の子供の頃、故郷にある診療所の先生や道場にちょこちょこ来てた助手のお姉さんも煙草を吸っていたので別に喫煙趣味というものに嫌悪や抵抗は特にないのだけれど。
でもお嬢様は……。
まあ何が言いたいのかと言えば、僕が知る限りお嬢様は煙草を嗜む趣味はなかったはずなのだ。
屋敷の使用人の中には何人か喫煙する者はいたが、旦那様も奥様もお酒は嗜んでいたものの煙草の趣味はなかった。
そもそもお嬢様の人生に、煙草が登場する機会はほとんどなかったはずなのである。
じゃあ何故、お嬢様はふてぶてしく鼻と口からゆらゆらと煙を漏らして見事なまでに煙草を嗜んでいられるんだ?
……いや、そんな。
荒唐無稽な考えが一瞬だけ頭を掠め、掠ったところからじわじわとその考えが頭に広がって、あっという間に染め上げる。
あるのか? そんな馬鹿なことが。
僕は緊張で浅くなった呼吸を整え、半身に構えて軸を通して脱力し、重心をいつでも動かせるように指先とつま先にまで気を巡らせて。
「…………誰だ貴様は」
その馬鹿なことを、言った。
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