今世は好きにできるんだ

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
15 / 34

御一行からの頼み

しおりを挟む
翌朝、学校用のカバンに寝巻きと下着と文房具を入れると、この家を出る準備は終わった。

制服を着てカバンを持つと、パールと伯爵とわたしの三人で馬車に乗った。


学院でパールを降ろすと伯爵とわたしは王宮内の役所に行った。

少し早く到着したが、開けてくれたので手続きを始めた。

「縁を切る・・・・・・勘当ですか?」と係員が確認して来たので、

「はい」とわたしが答えた。

「理由をうかがっても?」と遠慮がちに聞いて来たので

「必要ですか?」と返した。

「いえ・・・・・・」と小さく返って来た。



「こちらにそれぞれが署名をして、持って来て下さい」と二枚渡された書類を、署名用のテーブルに行ってじっくり読んで確認すると二枚に署名をした。

「伯爵閣下、こちらに署名をお願いします」と渡すと

「うーーー」と返事があった。伯爵はろくに目も通さずに署名した。

わたしはそれをもう一度窓口に持って行った。

しばらく待つと、係員が書類を持ってやって来た。

「こちらで終了しました」と書類を二枚テーブルに置いた。

わたしは一枚取るとさっと確認して、立ち上がった。

「伯爵閣下。それでは失礼いたします」と声をかけたが、返事もなかったし彼は目もあげなかった。



わたしは歩いて学院に向かった。鳥が律儀に朝の様子を教えに来てくれた。

今日は図書室に行かずに、院長室に行った。なぜか御一行様がいたので、話がすむのを外で待っていたら、

「なに、やってるんだ。早く入れ」とローリーがドアから顔をのぞかせて言ったので、わたしも中に入った。

平民はどんな挨拶をするのだろう・・・・


無言で頭を下げて、声がかかるのを待ったが・・・・・適当な所で頭を上げた。


それから院長に話しかけた。

「掛金をいただきに来ました」院長は無言で引き出しから、革の袋を出すと机の前に置いた。

わたしはそれをカバンに入れると、

「はい・・・・それでは失礼します。退学致しますので手続きをします」と軽く頭を下げるとドアに向かった。



「アリス嬢、待ってくれ。頼みがある」とハリーの声がした。

「近いうちに隣国の王族が留学して来る。夜会があるのだがアレクと一緒にいてもらえないか?」

「殿下とですか?」声に迷惑だって思いが乗ったが気にしない。

「そうだ。もちろん今回だけだって言い方は失礼だが・・・・・上位の貴族を誘うのは・・・面倒の元だ。その点君は伯爵家だし・・・」

「平民になりました」

「それはしばらく延期だ。秘密にする。王家の権力で・・・・」とローリーが言った。

なるほど、平民の小娘だ。どこの権力にも取り入れられていないし、夜会が終われば平民になって国を出る。お誂え向きだ。

「もちろん、これからの生活があるだろうから、報酬ははずむ」とローリーが笑うので

「ありがとうございます。それにつきましてお願いがあるのですが・・・・」

「なんだ?」

「ひとつだけ、願い事があります。報酬もそちらに回して頂いて・・・・・王室のお力を・・・・」

「いいぞ」とアレク殿下が即答した。

「殿下、そのよろしいのですか?」とわたしのほうがあわててしまった。

「もちろんだ。どんな事を願うのかかえって、楽しみだ」

「そうですね、アレク」とハリーが言うと、彼らは声を揃えて笑った。


「それでは、一番家が広いアレクの家に泊まってくれ」とローリーが言うと、

「すぐに行こうか。退学の手続きは、やって置く」とローリーはアリスに手を差し出した。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:875pt お気に入り:3,274

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:505pt お気に入り:134

ある公爵令嬢の生涯

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,466pt お気に入り:16,124

空っぽから生まれた王女

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:235

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:20,214pt お気に入り:1,330

一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:376pt お気に入り:1,125

私の名前を呼ぶ貴方

恋愛 / 完結 24h.ポイント:482pt お気に入り:1,616

処理中です...