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第五十五章
川は血で赤く染まる
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マリアは赤く染まる川面を見ながら語り始めた。
「このカーソンの森を流れるリオ・グランデ川には、多くの先住民の血が流された歴史があるの。
最初はスペイン人よ。15世紀にカーソンの森の奥へと侵入して来たスペイン人は先住民に対し『死による滅亡』か、『改宗による存続』かを迫って来たの。
古来から自然崇拝を重んじていた先住民はキリスト教への改宗には応じず、誇り高き死を選び、最後の最後まで闘った。
そして、結果は…、私よ。
惨殺で流れた血は強姦による混血により補填されたのよ。
やがて、時の経過と共に先住民の中にも自主的にキリスト教へと改宗する部族も現れ、スペイン人との融合淘汰が進み、流血の時代は終わったかに思えた…。
しかし、19世紀に最大の悲劇が起こるの。
アメリカとメキシコとの戦争よ…。
名前のとおり、この地は『ニューメキシコ州』 。
19世紀初頭はメキシコの管轄だったの。
先住民、スペイン人、ヒスパニック系メキシコ人の共存する土地だったの。
しかし、1847年、アメリカが領土拡大のためメキシコに宣戦布告し、戦争が勃発し、このカーソン森林地帯が最激戦地となってしまい、武力に圧倒するアメリカが勝ち、メキシコ側についた先住民は、その報復措置として壊滅的に殺戮され、またしても多くの血と遺体がリオ・グランデ川を赤く染めたの。
結局、傲慢な白人により先住民の血は流れ続けたの…。
今もそうよ。
白人至上主義者が理由なき殺戮、強姦を継承し続けているわ。
父は言っていたわ。
『リオ・グランデ川は血で染まる。
川底に眠る我々のアイデンティティの結晶である骨と血が、神である太陽に照らされ、赤く染まり、そして蘇る。』と
今、私達の目の前に現れたこの川こそ、父の言う『血の川』だわ。」
マリアはそう物語るとひざまつき川底の赤土を手で掴み、そっと流した。
そして、ジョンにこう言った。
「ジョン、ここにも貴方の、そして私のアイデンティティが眠っているのよ。
登って行くのよ!
『血の川』であるリオ・グランデ川を登り、そして、『神の山』であるホイラー山を登るの!
何かが見えて来るはず。」と
ジョンの心の動乱は『血の川』により鎮静された。
ジョンは馬から降りるとマリアと同じように川底の赤土を掬い上げ、そして、そっと握り締めた。
そして、既に口を閉ざした風達に心の中でこう言った。
『もう少し時間をくれないか。僕の血は決して『悪魔の血』ではないと僕の心の深淵に分からせる為に、もう少し、僕に時間をくれないか。』と
「このカーソンの森を流れるリオ・グランデ川には、多くの先住民の血が流された歴史があるの。
最初はスペイン人よ。15世紀にカーソンの森の奥へと侵入して来たスペイン人は先住民に対し『死による滅亡』か、『改宗による存続』かを迫って来たの。
古来から自然崇拝を重んじていた先住民はキリスト教への改宗には応じず、誇り高き死を選び、最後の最後まで闘った。
そして、結果は…、私よ。
惨殺で流れた血は強姦による混血により補填されたのよ。
やがて、時の経過と共に先住民の中にも自主的にキリスト教へと改宗する部族も現れ、スペイン人との融合淘汰が進み、流血の時代は終わったかに思えた…。
しかし、19世紀に最大の悲劇が起こるの。
アメリカとメキシコとの戦争よ…。
名前のとおり、この地は『ニューメキシコ州』 。
19世紀初頭はメキシコの管轄だったの。
先住民、スペイン人、ヒスパニック系メキシコ人の共存する土地だったの。
しかし、1847年、アメリカが領土拡大のためメキシコに宣戦布告し、戦争が勃発し、このカーソン森林地帯が最激戦地となってしまい、武力に圧倒するアメリカが勝ち、メキシコ側についた先住民は、その報復措置として壊滅的に殺戮され、またしても多くの血と遺体がリオ・グランデ川を赤く染めたの。
結局、傲慢な白人により先住民の血は流れ続けたの…。
今もそうよ。
白人至上主義者が理由なき殺戮、強姦を継承し続けているわ。
父は言っていたわ。
『リオ・グランデ川は血で染まる。
川底に眠る我々のアイデンティティの結晶である骨と血が、神である太陽に照らされ、赤く染まり、そして蘇る。』と
今、私達の目の前に現れたこの川こそ、父の言う『血の川』だわ。」
マリアはそう物語るとひざまつき川底の赤土を手で掴み、そっと流した。
そして、ジョンにこう言った。
「ジョン、ここにも貴方の、そして私のアイデンティティが眠っているのよ。
登って行くのよ!
『血の川』であるリオ・グランデ川を登り、そして、『神の山』であるホイラー山を登るの!
何かが見えて来るはず。」と
ジョンの心の動乱は『血の川』により鎮静された。
ジョンは馬から降りるとマリアと同じように川底の赤土を掬い上げ、そして、そっと握り締めた。
そして、既に口を閉ざした風達に心の中でこう言った。
『もう少し時間をくれないか。僕の血は決して『悪魔の血』ではないと僕の心の深淵に分からせる為に、もう少し、僕に時間をくれないか。』と
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