迷子の僕の異世界生活

クローナ

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真実

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「良かったですねノートンさん。」

飛びついたノートンさんの向こう側で俺達ふたりを支えながらセオが苦笑いしていた。

「ごめんなさいセオさん。」

「いいですよ。でもさすがにふたり分は重たいので起きてください。」

ノートンさんもすっかり体重を預けてしまったみたいだ。本当にノートンさんとセオの間には遠慮がなくて羨ましく思う。俺もいつかそういう関係になりたい。

「じゃあ俺はそろそろ騎士舎に戻ります。」

セオはノートンさんを、ノートンさんは俺を起こすとそのまま立ち上がってクラウスに向かって一礼すると扉に向かった。

俺はまだセオに何一つお礼を言えてなくて、声を掛けようと後を追った時ノックがして返事を待たずに扉が開いた。

「あ、セオさんまだいたんだ、おはよう。」

「おはようレイン。おはようマリー。ノックの後は返事を待たないと学校で注意されるぞ。」

「おはようセオさん、学校ではちゃんとするわよ。今日もお休みなの?」

セオの背中で二人の顔が見えなかったけどその様子はいつもと変わらないと元気な声でよくわかった。

「いや、もう帰るよ。トウヤさんも戻ってきたしね。」

そう言って真後ろに近づいていた俺を背中越しにちらっと見ると身体を横に一歩ずらし、扉を大きく開いてふたりを中に入れた。

「なんだ帰ってたのね。おかえりトウヤ。」

「うん、ただいまマリー、レイン。」

「おかえりトウヤ。」

セオという壁がなくなり目の前に現れた俺を見てホッとしたのと嬉しそうなと混ぜた顔をしてくれた2人が可愛くてたまらずいつものハグちゅうをしていると扉を閉めるついでにセオは部屋を出てしまった。

「あ……。」

「どうしたのトウヤ。」

「うん。昨日のお礼をまだセオさんに言えてなくて……。」

「トウヤくんセオならまた来るさ。それより二人ともどうしたんだいこんなに早く。」

2人を優先してセオに声を掛けそびれてしまった事が気になって閉じられた扉に目を向けた俺にマリーが気付いて声を掛けてくれたけれどノートンさんも気付いてくれたみたいだった。

「お、俺達は朝の支度の前にトウヤがいつ頃戻るのか聞きたかっただけなんだけど……。」

「ありがとう、でも俺がやるから大丈夫だよ。」

答えながらレインの視線はノートンさんが座るソファーの向かい側に立つクラウスに向けられていた。もちろんマリーも同じ。

「起きたついでに手伝うわ。でも……ねぇ、なんでお城の騎士様がここにいるの?」

俺の袖を小さく自分の方へ引きながらマリーもちらちらとクラウスに目を向ける。

「マリー、レイン。俺がふたりに『話したい事がある』って言ったの覚えてる?」

「覚えてるわよ、でもそれと何か関係あるの?」

「あるよ、ちょっとこっちに来て。」

不思議そうな顔を互いに見合った2人を連れてノートンさんの隣に座らせると俺はクラウスと一緒に向かい側に座った。

クラウスが軽く会釈をすると2人も習ってぺこりと頭を下げる。

「この人はクラウスさんって言うんだ。何度か会ってるけど覚えてるかな?」

「うん……『桜の庭』に来た頃トウヤが庭で探してた人でしょ?『桜の庭ここ』で働くように勧めてくれた人だって。その後も何度か見たわセオさんの見送りの時とか。」

「うん俺も知ってるよ。遠征から帰って来たセオさんとも一緒に来たしそれにこの前ディノを連れてきてくれただろ。でも赤騎士じゃなかったっけ。」

それは2人の記憶力がいいからなのか、『桜の庭』にはあまり変化が無いからその一つ一つが印象的なのかたった数分の出会いをきちんと覚えていた。

マリーはノートンさんにくっついていて見慣れないお客に警戒している一方で、レインは背筋を正し胸を張り両手は膝に置いてクラウスの姿勢を真似ているみたいだった。

「クラウスさんはこの前の昇格試験で近衛騎士になったんだ。それでね、俺の話と言うのは……。」

照れくさくてなかなか言葉が出てこない。そしてクラウスを見たけれどそれは逆効果だった。お陰で赤い顔で伝える事になってしまった。

「えっとクラウスさんは俺のこ…婚約者なんだ。」

「トウヤ近衛騎士様と結婚するの?」

「うん。」

やっと伝えられた言葉をマリーに復唱され人に認められる事はどれだけ嬉しいかが実感できた。

「本当は結婚の報告をしたかったんだけど昨日は色々あったから結局結婚式は出来なかったんだ。でもいつかするよ。それでね2人が一番気になるだろうから言っておくけど結婚しても『桜の庭』は辞めないよ。」

「それ、本当?」

「うん、結婚で辞めたりしない。だって俺達住むところがないんだ、ね、クラウス。」

「そ、そうなの?近衛騎士なのに?}

レインが驚いて直接クラウスに言葉を向けた。

「ああ、俺はこの通り近衛騎士だからセオが騎士舎にいるように王城に詰めている。休みも護衛対象に合わせるから無いようなものだ。」

そう言って2人に向けてクラウスはにかっと笑った。

「でも時々昨日みたいに貸して貰えたら嬉しいかな。」

そして今度は俺にいたずらな顔を向けて笑った。

これでマリーとレインが納得してくれたかはわからないけれど窓辺の小鳥が鳴いて朝食の届いた事を知らせてくれたから2人への報告はこれで一旦終了することになった。

そして俺達は朝の支度へ、クラウスはお城へ帰って行った。




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