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番外編:他視点
1:アデル独白
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「結婚してください! 私が幸せにします!」
最初は、変わった子だと思った。
貴族の令嬢らしくない元気な女の子。
商家の跡取りとして、商人として働いていた為というよりは……たぶん本人の気質だったのだと思う。
商人として外面を取り繕う事もできるし、腹芸もできそうな子でもあったけど……。
「アデル様! アデル様!」
私に対して感情を取り繕わずに、人懐っこく笑いかける様子は令嬢に向けるには相応しくないけど……子犬のようだと思った。
純粋な好意など今まで向けられた事もない。
妻からは、不要のものとして扱われ、息子からも無能と蔑まれた。
義父には、中継ぎの跡取りとして扱われたが……それでも、息子が成人するまでの代理でしかなく、領を維持する為だけの道具でしかなかったのだと思う。
本来の跡取りである息子は、成人しても領主としての仕事を嫌がり、母親である妻と王都で遊び暮らしていたのだが……。
妻が死に、私に黙って散財していた借金が明るみになり、息子にも同じような借金が発覚した。
エリスの実家である男爵家から婚姻による融資の申し出があり、息子に悪いとは思ったもののそれを受け入れた。
そうでなければ、迫った支払期限で領地なり、爵位なり、屋敷なりを何かしらを手放さなければならなかったから。
その結果、なぜか私が婚約する事になったのだが。
人生とはわからないものだと思った。
「エリス。君は幸せかい?」
領地を、母国を、息子すら手放し、友の手を借りてたどり着いた隣国。
母国では望めなかった結婚式を上げ、幸せそうに私へと甘える幼妻に尋ねる。
「はい! 幸せですアデル様!」
歳が離れすぎている。私が先に旅立つ不安もある。
だけど、この笑顔を見ているとこの子に、エリスが愛してくれるのであれば残りの人生を全てあげてもいいのかなと思う。
「私も幸せだよ」
そう告げて、額にキスを落とせば、体を重ねた間柄でもあるというのに彼女は頬を真っ赤に染める。
愛おしい。そんな感情をこの歳になって覚えるとは思いもしなかった。
最初は、変わった子だと思った。
貴族の令嬢らしくない元気な女の子。
商家の跡取りとして、商人として働いていた為というよりは……たぶん本人の気質だったのだと思う。
商人として外面を取り繕う事もできるし、腹芸もできそうな子でもあったけど……。
「アデル様! アデル様!」
私に対して感情を取り繕わずに、人懐っこく笑いかける様子は令嬢に向けるには相応しくないけど……子犬のようだと思った。
純粋な好意など今まで向けられた事もない。
妻からは、不要のものとして扱われ、息子からも無能と蔑まれた。
義父には、中継ぎの跡取りとして扱われたが……それでも、息子が成人するまでの代理でしかなく、領を維持する為だけの道具でしかなかったのだと思う。
本来の跡取りである息子は、成人しても領主としての仕事を嫌がり、母親である妻と王都で遊び暮らしていたのだが……。
妻が死に、私に黙って散財していた借金が明るみになり、息子にも同じような借金が発覚した。
エリスの実家である男爵家から婚姻による融資の申し出があり、息子に悪いとは思ったもののそれを受け入れた。
そうでなければ、迫った支払期限で領地なり、爵位なり、屋敷なりを何かしらを手放さなければならなかったから。
その結果、なぜか私が婚約する事になったのだが。
人生とはわからないものだと思った。
「エリス。君は幸せかい?」
領地を、母国を、息子すら手放し、友の手を借りてたどり着いた隣国。
母国では望めなかった結婚式を上げ、幸せそうに私へと甘える幼妻に尋ねる。
「はい! 幸せですアデル様!」
歳が離れすぎている。私が先に旅立つ不安もある。
だけど、この笑顔を見ているとこの子に、エリスが愛してくれるのであれば残りの人生を全てあげてもいいのかなと思う。
「私も幸せだよ」
そう告げて、額にキスを落とせば、体を重ねた間柄でもあるというのに彼女は頬を真っ赤に染める。
愛おしい。そんな感情をこの歳になって覚えるとは思いもしなかった。
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