かたちなきもの ~楠木正成、湊川に戦う~
建武3年5月25日(1336年7月4日)、湊川。九州から迫り来る足利尊氏の大軍を、楠木正成は見つめていた。かつて九州へ尊氏を追い落とした時、正成は尊氏との和睦を訴えたにもかかわらず、公家たちに笑われた。そして今、尊氏が攻めて来たため、正成は京から落ちのび、しかるのちに京に入った足利を囲んで討つことを献策したが、受け入れられなかった。
そのうえ、兵庫にいる新田義貞と合流して、かの地にて尊氏を討てとの綸旨が下る。
兵は少なく、士気もない――それでも戦え、との綸旨が。
「実はの、このいくさ、まだ勝てる──まだ、手はあるんや」
南北朝時代、最高の名将と言われる男の、最後の戦いが幕を開ける。
【表紙画像】
狩野山楽, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
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