◆私、刺繍が“好き”と言った記憶はありませんが◆
「誰があんな刺繍しか特技のない地味な成り上がり女と婚約したいと思う? 家のために仕方なくに決まってるだろ。まぁ、どれだけこっちが罵っても文句も言えない気弱なとことかは、結婚した後によそで遊べて良いと思うけどな」
それは夜会の熱気に当てられて、外の空気を吸おうと出た庭園の片隅で耳にした言葉。聞き間違いようもないその声に、婚約して以来ずっと我慢していた何かがプツッときてしまった男爵令嬢テレサ・フェルディア。
十年間婚約関係を我慢していたのはそちらだけだと思いましたか?
とある商人から成り上がった男爵令嬢が婚約者の子爵令息をぶん殴って、一晩だけ婚約破棄気分を味わった翌日にまた婚約する話。
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