仮面舞踏会で婚約者に別の令嬢と間違えられました。ですが、私が婚約を終える理由はそれではありません
左のこめかみから頬へ傷のある伯爵令嬢セシリアには、二年間婚約しているローレンスがいる。
傷へ視線が集まればさりげなく助け、毎週白薔薇を欠かさない。セシリアは、彼を気遣いのできる婚約者だと思っていた。
そんな二人が参加した仮面舞踏会で、セシリアの白い羽扇が壊れ、代わりに黒檀の扇を借りることになる。
銀青のドレス、真珠の仮面、栗色の髪、そして白い羽扇。
予定どおりの装いをした別の令嬢を見つけたローレンスは、相手の顔を確かめるより先に手を差し出した。
「セシリア、探したよ」
けれど、その女性はセシリアではなかった。
一方、以前から交流のあるエリアスは、声と、考えるときに扇の骨を揃える小さな癖からセシリアに気づく。
それでもセシリアは、一度の人違いを責めるつもりはなかった。
ローレンスが自分は踊りを嫌い、白薔薇が一番好きだと思っていたことも、これまで自分が話さなかったせいかもしれない。
ならば、今から話せばいい。
「私は最後まで残りたい。最後の曲を踊りたい。仮面を外すかどうかも、自分で決めたい」
初めてはっきりと望みを伝えたセシリアに、ローレンスは言う。
「今夜の君より、私が二年間見てきた君を信じる」
そのときセシリアは、ようやく気づく。
彼が見ていたのは、今ここにいる自分ではなかったのだと。
零時の鐘が鳴る。
セシリアは、自分の手で仮面を外す。
そして、婚約を終えると決める。
――別の令嬢と間違えられたからではない。
自分の言葉より、彼の望む「自分」を信じられてしまったから。
傷へ視線が集まればさりげなく助け、毎週白薔薇を欠かさない。セシリアは、彼を気遣いのできる婚約者だと思っていた。
そんな二人が参加した仮面舞踏会で、セシリアの白い羽扇が壊れ、代わりに黒檀の扇を借りることになる。
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「セシリア、探したよ」
けれど、その女性はセシリアではなかった。
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零時の鐘が鳴る。
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そして、婚約を終えると決める。
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