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第1章

No.125

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「それでは、マコ様。お休みなさいませ」
「はい、お休みなさい」

ーーパタン

リディアさんに挨拶をすると、静かに扉が閉まる。
それを見届けると、真琴は勢い良くベッドに背中から倒れ込む。すると、バフッという音と共に柔らかいシーツが真琴を優しく包み込む。シーツからは、優しい太陽の匂いがする。

「ふ~。……疲れた」

静かに目を閉じる。
そうすると、チクタクと秒針が時を刻む音や外の風の音。それに、屋敷の人達が未だ働く音が聞こえてくる。

(帰ってきた…)

そう思った自身に、真琴は思わず目を開けて笑う。

(帰ってきたって….。何それ)

一体、自分はいつから此処が自身の帰る場所だと思う様になっていたのだろう。この世界に来たばかりの頃は、あんなに帰る場所は家族の元だと思っていたと言うのに。

(あぁ、そうか…)

私は、いつの間にか無意識にこの場所を……アルフォンスやリディア達が居るこの場所が自分の帰る場所だと思っていたのだ。
だから、夢で家族が真琴が居なくても笑っていた事に安堵したのだ。

ーー自分が居なくても家族は大丈夫。

そう思ったから。

「私の馬鹿…」

自分の事なのに、何も分からなかったなんて。
鈍感とかそういう問題じゃない気がする…。

「あんなに、帰りたいって思ってたのに…」

今も、帰る方法を探す事に変わりは無い。
だが、その意味合いは全く違う。
最初の頃は、家族の元に帰りたい気持ちで帰る方法を探していた。だが、自分の気持ちに気付いた今は…。

(お別れの挨拶とか、何にも無しに急にこちらに来ちゃった。………だから、ちゃんと皆んなに私に何があったのか、ちゃんと話したい)

いきなり引き離された自身の大切な家族に、何が起こったのか話したい。心配かけた事を怒られて、抱き締められて…。そうして、言うのだ。

ーー大切な人が出来た…と。

「っ~~!!」

改めて大切な人と言葉にすると、凄く恥ずかしい。
慌てて枕を手に取り、顔に押し付ける。
そうして、暫くベッドの上をゴロゴロと転がる。

(心臓が、凄いドキドキしてる…。恋って凄い)

これが初恋の真琴。
今まで何でも無い様な事にも、感情や心臓が反応する。

「こんな事なら、紗希に色々聞いとくんだった…」

過去に彼氏がいた妹が話していた、恋愛の心構えを真面目に聞いとけば…。まさか、今になって興味が無くて聞き流していた事を後悔するとは。

「真面目に聞いたと言ったら…」

1番年下の由香の、クラスの何々君が格好いいやら誰々君と手を繋いだ…などの微笑ましい話だけだ。

「………あれ?もしかして私、小学一年生の由香にも負けてる…?」

その事実に驚愕した。
今時、小学生さえ手を繋いでいるのに真琴はこの18年間誰とも手を繋いだ事がない。この世界に来て、初めてアルフォンスと出かけた時に繋いだのだ。

「………早熟って、怖い」

今時の子供の早熟さに慄く真琴だった。













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