魔力ゼロの手品師、魔族を騙して大魔導師と呼ばれる
結婚式の余興で、鳩の風船を出すはずだった。拍手の代わりに、床が抜けた。
四十二歳のテーブルマジシャン・真柴が落ちた先は、魔族に狙われる辺境の村。燕尾服姿の彼を村人は「大魔導師様」とあがめるが、審問騎士ルシアは一目で言い切った。
「魔力、一滴もありません。偽物です。火刑にします」
ところがこの世界の魔族は、魔力の流れを読んで魔法も剣もかわしてしまう。だから魔力ゼロの男だけは、敵の目に映らない。
肩を叩いて剣を抜き、空を見上げて群れを振り向かせる。使うのは、現実にあるタネと仕掛けだけ。
火刑の申し立て書を鞄に入れたままタネ明かしを迫る女騎士と、なぜか手元ばかり見つめてくる魔族の将。元の世界へ帰る道を探しながら、手品師は今夜も客の前に立つ。
「本物の魔法は、タネがないから怖いんだろ。俺のは、タネしかない」
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肩を叩いて剣を抜き、空を見上げて群れを振り向かせる。使うのは、現実にあるタネと仕掛けだけ。
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