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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第395話 温泉に行こう

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街を覆う湯気、漂う湯の香り、ここは聖地草津温泉郷。
皆さんこんばんは。お茶の間の箸休め、のっぺり佐々木でございます。
今夜より始まります新番組企画"温泉に行こう"。全国各地の温泉を訪ね、その素晴らしさをお伝えするこの番組。
こののっぺり佐々木、全力で取り組ませていただきます。
初回の今夜は温泉郷の聖地、草津温泉郷にやって参りました。
草津よ、俺はやって来たぞ~!
(スパーン)
いった~い、何するのよ木村君。丁度言い感じに盛り上がって来た所だったのに~。

「挨拶が長い。何一人で番組を進めようとしている、ちゃんと仕事をしろメインMC。」

うぐっ、正論過ぎて何も言えない。イケメンはこうやっておっちゃんから出番を奪っていくんや~。
ご紹介致します。温泉といえばこの人、露天風呂をこよなく愛する男、モデル木村英雄君です。

「皆さんこんばんは。全国の温泉を巡ってその良さを伝えたい、温泉王子木村英雄です。露天風呂こそ我が人生、皆さんもっと伝統文化を愛しましょう。
そもそも露天風呂とは、」
ハイハイそこまで~、木村君ヒートアップし過ぎだよ~。君は温泉王子なんだよ、言葉じゃなくその姿で温泉の良さをアピールしないと。

「ぐっ、のっぺりに正論を言われるとは。俺も久しぶりの温泉企画に少々興奮していたようだ。
難しい事は言わん。心から温泉を楽しもう。」(ニカッ)

グホッ、こ、このイケメンめ。破壊力抜群じゃないか。
スタッフさん生きてる?良く耐えた、偉いぞ。のっぺりの顔を見てクールダウンするんだ。
お茶の間の皆もクールダウンタイムです。はい、吸って~、吐いて~。
じゃあ早速行きましょうってその前に、本日は特別ゲストが来てくれています。Cボーイズの皆さんです。

"ガヤガヤガヤ"

「「「こんばんは、Cボーイズで~す。」」」

Cボーイズの皆さんはまだ結成されたばっかりって聞いてるんだけど、この番組がデビューって本当?

「はい、僕たち同じ学園の友人同士で結成されたグループなんですが、全員テレビどころかメディアに出るのも初めてなんですよ。」

うっそだ~!皆さんめっちゃイケメンですやん、あり得ないって。
えっ、この番組がメディア初って、スタッフ及びテレビの前のみんな、我々はCボーイズの"初めて"を頂いちゃいましたぞ~!

天に向かい両の手を掲げ、全身で感動を表すのっぺり。その背後には張り扇聖剣を振り上げる王子の姿があった。
"スパーン"


「Cボーイズのみんなは温泉とかは来たりするのかな?」

「いえ、僕たち旅行自体ほとんどした事がなくって。今思えば狭い世界で生きていたんだなって。
このお話しをもらって本当に嬉しかったんですよ。自分たちを変える切っ掛けになるんじゃないかって。」
「「「そうそう、俺たち世の中を知りたいんです。」」」

「そうか、じゃあまずは温泉の世界を紹介しよう。温泉は素晴らしいぞ。」

「「「よろしくお願いします、木村君。」」」

こうして楽しげに談笑しながら彼らは湯煙の中へと消えて行くのでした。
って俺を置いてきぼりにしないで!?
のっぺり佐々木君、番組MCよ?
ちょっと待って、そこのイケメン集団~!
急いで後を追い掛けるノットイケメン、のっぺり佐々木君なのでありました。(ぐすん)


(side : Cボーイズ)

「「「うまい!」」」

「でしょう♪うちの饅頭はアンコが違うからね。ゆっくり食べて行ってね~。」

「お姉さんありがとうございます。ところでこの辺、露天風呂ってまだあります?最近どこも閉鎖しちゃっててなかなか見つからないんですよね。」

「そうだね~、昔は結構あったらしいけど最近じゃすっかり聞かなくなっちまったかね。最新の情報なら観光協会じゃないかい?この先に案内所があるから行ってみたらいいよ。」

「了解であります。こののっぺり、早速行ってみるであります。」(敬礼)

"さぁ皆さん行きますよ~"
元気良く先導して歩くのっぺり佐々木。

「なぁ木村君、佐々木君っていつもあんな感じなのか?」

Cボーイズの市ヶ谷は何か珍獣でも見るような表情でのっぺりの事を指差していた。
街で会うどの人に対しても笑顔で話し掛け相手の懐に飛び込むのっぺりの行動は彼らCボーイズ、桜泉学園高等部外部進学生徒のはみ出し者である自分たちにとっては衝撃的なものであった。
これまで彼らの中では女性とは何もしなくても周りに集まりこちらを気遣う存在という意識があった。しかしそれらは桜泉学園高等部では全く通用せず、日々憤懣を溜め続けていた。
だが自分たちは何か行動を起こしただろうか?その状況を変える為に必要な情報すら集めていなかったではないか。
やっていた事と言えばただの傷の舐め合い。
やってられるかと去って行く奴がいた、どうでもいいとばかりに自らの道を進む奴がいた。
俺たちはそのどちらでもない、ただの敗北者。

「なぁ木村君。俺たちも佐々木君の様になれるかな。」

その問い掛けに、木村君はやや引き攣った顔をして答えた。

「いや、あれになる必要はないと思うぞ。あれは例外中の例外だからな。
難しく考える必要はないんじゃないか?相手の目を見て話しをする。ちゃんと相手の話しを聞く。こちらから話し掛ける。
これだけ出来れば十分だと俺は思うぞ。
下手な考え休むに似たりと言うだろう、まずは温泉に浸かって頭を空っぽにしてみろ。焦る必要は全くないんだから。」
木村君はそう言うと観光協会の案内所へと歩いて行った。

「なぁ市ヶ谷。」
「なんだ、東野。」
「俺、Cボーイズの活動頑張ってみようと思う。今はまだ分かんないけど、何かが見えそうな気がするんだ。」
「そうか、俺もそう思ってた。他の奴らも同じ意見みたいだな。
俺たちの初仕事、頑張っていくぞ!」
「「「応!」」」

俺たちは頷き合い彼らの後を追い掛ける。その顔は何かスッキリと力強いものに変わっていた。
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