境界人たち
終電を逃した夜、男が降り立ったのは見知らぬ「きさらぎ」駅。
鳴り止まない鈴、片足のない駅員、暗いトンネル――断片の記憶だけを残して“帰って”きたはずだった。
だが日常は僅かに噛み合わない。
階段の配置が変わり、秒針が逆に跳ね、数秒の記憶が抜け落ちる。
鏡の中の自分が、一瞬だけ別人の目でこちらを見る。
誰にも信じられないズレを記録し続ける彼が辿り着いたのは、異界の生還者が集う秘密の場「還り人の会」。
管理人・伊佐奈は、彼らを「境界人」と呼び、世界の歪みを正す「調整」の役目を語る。
救いは見つかった――はずなのに。
夜の「調整」はどこか不自然で、仲間たちの目は人間の温度を欠いていく。
そして届く招集。
「特別な儀式を行います」
場所は、廃線となった地下鉄ホーム。
鈴の音が、また近づく。
チリン、チリン。
境界が開くのは、世界か。
それとも――自分か。
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