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6章 居場所

62.2人の長が追い詰められた先 01

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 私はこの一大事と言う状況にありながら拗ねていた。 ヴェルに狼の姿へと変化させ、べたっとその背に身を預けながら拗ねていた。 背中に身を預けているのは、その背に私を乗せて移動してもらっているから。 そこに拗ねる理由はなく、私が勝手に拗ねているだけ。

 それでもヴェルは私に問う。

「何を怒っている」

 ヴェルの声には戸惑いがあった。 まぁ、自分以外に甘い声で語り掛けるな等と思われているとは思いもしないだろうし、むしろ深く、怪しい艶の有る声色で囁く事の意味を理解しているのかも怪しいものだ。

 あの瞬間、ジュリアンから恐怖が抜け落ち、微かに頬を赤らめていたから余計に腹が立つと言うものだ。

「怒ってないし!!」

「そうか。 それならいい」

 それはソレで腹が立ち、耳に噛みついてやった。 ギャンッ等と吠える事はなかったが、走る速度が遅くなりバランスが崩れて落ちそうになった。 まぁ、落ちても自業自得だから文句を言う気はないけれど、落ちないように赤いツルリとしたリボンのような触手が私を支え、背に括り付けられ、口が塞がれた。

「むぅ」

「大人しくしていろ」





 私は風を感じながら、思考を切り変えるように、私は左手首の少し上の部分で額をとんとんと軽く叩いた。

 向かっているのは魔導師長の元。

 敵か味方か悩むよりも敵なら今まで良く人を利用してくれやがったなで叩きつぶす。 そして味方なら……まぁ、良し。 判断基準にはちょっと困るが、正直言えばコチラには時間が無い。

 何しろ敵は、用意周到に事を起こしているように思えるから。

 王宮魔導師達が使う研究棟の敷地内は色々と術式が張られているが力づくで突破して、魔術的な鍵がかけられている扉はぶち破る。

「な、何事だ!!」
「邪魔をする!! 魔導師長はどこ?」
「と、捕らえろ!!」

 なんて、つかまる訳がない。 魔導師長の部屋は知っている訳で、留守なら留守で部屋を荒らしてやろうと思っていれば、背後から神殿長と共にやってきた。

「なにを、」
「何してんのよ!!」

 私は、勢いで押しまくる。

「あんた、あの術式は何? 一体何を考えている訳? 返答によっては酷い目に合わせるからね」

「あの生意気な女を捕まえろ!!」

「あんた達ごときにつかまる訳がないじゃない」

「止めなさい!!」

 魔導師長が叫べば、私に攻撃を向けようとしていた魔導師達は動きを止めた。

「命拾いしたな」

 そう笑うのは、未だ狼の姿で私を背に乗せているヴェル。

「勘弁してください……。 それで、コレはなんの騒ぎなのですか。 忙しいのだと、休みも取れない状況だと言っているでしょう。 仕事の邪魔をせず、仕事をしてください」

「どの口がそんなことを言う訳。 殺されたいの?」

 冗談ではなくマジに言えば、2人の長は息を飲みヴェルを眺めた。

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