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物語

37.パパさん達頑張る

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 月日が過ぎるのは早いものだ。

 私が、魔法薬を王宮に持ち込んだとされた日から、3か月が経過している。 その間私は奥屋敷から出る事無く、信頼のおける使用人以外側に寄せず、心無い言葉により心を痛め床に伏していると言う事にし、表舞台から遠ざかっている。

 周囲が慌ただしく動く中、私は穏やかな日々を送っていた。



 一方、パパさん達3人は忙しく動き回っており、まずは隣国の王様の枕元にしのび込み脅迫……ではなく交渉。

 深夜に圧の高い3人のオジサンがやってくるのは恐怖に違いないと、得意げに語る王様の話に私ティアは同情したものだった。

「ちょっと悪いんだけどなぁ、ノーザングリア国の国境沿いまで軍を出して、宣戦布告をしてくれないかなぁ? いや、別に争いをする気は無いんだ。 なっ、頼む!!」

 と分厚い腕で肩を組みながら、王様は頭を深く下げ丁寧にお願いしたらしい。

 何が起こっているのか分からない隣国の王様は、戦争なんて嫌だと怯えながらも拒否すれば、パパがこう続けたそうだ。

「私達にとって、城に忍び込むなんて訳も無い事。 余計な事を考えずに、要求をのんだ方が無難ですよ」

 ちょちょいのちょいと大雨を降らせガンガン城に雷を落としながらの脅迫。

「お互い、攻撃はしないとここに誓約書を作っておいた。 さぁ、サインをするがいい」

と書類を突き付ける大公。

「なになに、アンタにとって損ばかりじゃない。 うちから軍費は出させてもらうし、成功の暁には、色々とお互い盟友として話し合おうじゃないか」

 返事をするまで、3人で囲んだそうだ。



 ちなみに、コレはジェフロアをサンテから遠ざけるために行ったらしい。
 王子は先頭に立って出兵しろってね。



 ご愁傷様。



 そして神聖皇国に対してはと言えば、サンテの運営する孤児院がそのまま、脅迫の材料となっていたそうだ。

・サンテは、かつて高位神官相手の娼婦だった。
・神官は女神の夫であるため、娼婦自体が機密。
・行為により100人に1人の割合で奇跡が移植。
・奇跡が移植された娼婦、身ごもった娼婦は処分。
・処分予定だった人物をサンテは連れ出し、自らの手足として使っていた。

・奇跡の活用には、膨大な魔力が必要なため、大神殿では自らが禁じている魔力供給薬が日常的に作られている。

 サンテやイザベルの置かれた状況には、同情する面もあるが……自国が被害にあい、乗っ取りを企てられると言うのは面白くない話。 容赦はするつもりないと言うのが、パパさん達の意見だった。



 サンテの孤児院から集められた書類を突きつけたのは、神聖皇国の主の寝室。 寝込みを襲うのは一番話が早く済むとホクホクご機嫌で語られたが……。

 馬鹿みたいな筋肉と、魔導師、地位と権力があってこそと言えるだろう。



「誰がそのような話を信用すると言うのだ」

 皇国の主である皇王は、かなり余裕で3人を迎えた。

「誰って、アンタだよアンタ。 こんなのが知られちゃ、神の威光も何もあった話じゃないだろう」

 そう言って胸元に指を突き付ける王様。
 書類を突き付ける大公。
 叩きつけるように払い退けようとする皇王。

 王様の手を払いのけようと叩きつけた皇王の手は、嫌な音と共に逆方向に曲がった。

 一歩控えた所にいたパパこと大魔導師様は、皇王の行動を予測し彼の耐久度を下げておいたらしい。

「ぎゃぁああ」

「あぁ、悪いなぁ。 だが、暴力をふるったのはアンタだ。 ワシじゃない。 それに、奇跡の主であれば、それぐらいすぐに治せるだろう?」

「えぇええい、誰か!! 誰か!! 警備のものはどうした!!」

 泣き声交じりで叫んでも誰も来ないし、返事すらない。

「来ませんよ。 皆良く眠っていますからねぇ~。 なので、証拠の書類も沢山手に入れる事ができました。 代々の皇王様は随分とこまめでいらっしゃる。 兄上にも見習って欲しいものです」

 各国がピンチの際に払う金銭の記録の山が、皇王に見せつけるように急に現れた。

「金払いの良い国ほど、不幸を与える。 そのために毒物を作っていた……我が亡き王妃にその手段を取ってなかった事を命拾いしたと喜べ」

「か、返せ!!」

 書類を前に立ちふさがる大公は、剣を構えながら礼を述べた。

「丁寧な書類いたみいる」

「弟よ、乱暴は良く無いぞ。 なぁ、皇王さん聞いてくれ、別にワシたちは皇国を潰そうと言っているんじゃない。 お互い不干渉で居られるよう、話し合いをしようと言っているんだ。 で、まずは……王妃の座についた女と聖女とその一味を、罪人として連れ帰ってくれんか? まぁ、ソレが出来ないなら、そうだなぁ……どうしようか?」

「我が国で処分をしても一切関与しませんと一筆頂ければソレでよろしいのではないでしょうか?」

 そう言うのは大公。

「ワシは皇国の者達と違って、血生臭い事は嫌いなのになぁあ~。 仕方がない。 国の大事だ、ワシが自ら処分しよう」

 ニヤリと笑う王様。

「いえいえ、陛下にそのような血生臭い事をさせる訳にはいきません。 私が、引き受け末永く面倒を見ましょう」

 やはりニヤニヤ笑うパパ魔導師。

 そして、善人面をした大公は言うのだ。

「そのように張り切らずとも、神聖皇国が行った奇跡の記録は頂きましたし、きっと彼等は快くお願いを聞いてくれるでしょう」

 各国の要人たちが奇跡を求めお布施を行ったが、奇跡を施された例は殆どなかったと言う記録である。 そして、金払いが良い者達は、第二、第三の被害者を毒系の魔法薬によって生み出されたと言う記録を大公は手にしていた。

「サンテが何をしていたか、理解は出来んかった。 だがな、アナタ達のやって居た事を見て良く理解できた。 アレ等はアンタ達を真似てうちの国を内部から破壊しようとしてくれているんだな。 でだ、アンタ達はどれだけ関わっておるのだ?」

「知らん!! 私は関係ない」

「本当かどうか、聞いてみよう」

「私に魔法は効かないぞ!!」

「いやいや、指に聞いてみるのだよ。 治癒が出来るから、幾らでも問いかける事が出来る」

 力任せに皇王の手を取り、テーブルにつかせ、指を逆方向に折り曲げる。

 上がる悲鳴に応えるものはない。

 それでも国を預かる王と言うべきか、良い返事を貰えるまで1週間がかかったと言う話だった。
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