『昼メロになる前に』

**『昼メロになる前に』**

トーストが跳ねる 日常の音
石鹸の香りは 昨日までの嘘
アイロンの熱が 喉元を撫で
あなたの嘘を 白く引き伸ばす

「微風」のあとに 「薔薇」が香った
一秒、指先が 迷うくらいの
それは 宣戦布告のフレグランス
まだ 修羅場とは呼べない 微かなずれ

お隣の影が 窓を叩いて
「始まるわよ」と 呪文をかける
悲劇のヒロイン 演じるほどに
私はまだ 暇じゃないの

スマホの裏側 光る通知と
「嫁」と呼んだ その口元を
今は 静かに 見つめているわ
感情を データに書き換える作業

ピアノの重低音が 鳴り響く前に
花瓶が床で 砕け散る前に
私は 脚本(プロット)を奪い取る

ドロドロに溶ける 時間は終わり
冷徹な指で 幕を引く
さあ、昼メロ(ドラマ)になる前に
本当の私の 物語を始めましょう

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