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第9話 真夜中の侵入者
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しおりを挟むキース様のお披露目を終えて、金魚の少なくなった水槽はテラスから屋敷の中の空いている部屋に移動したわ。
また猫に狙われたりしたら、きんちゃんとぎょっくんに怒られるからね。
明日から、また金魚を少しずつ補充しておこう。口コミが広がるまでにはまだ時間がかかるだろうけれど、少しずつ商売を始める準備をしておかなくちゃ。
キース様も、「アカリアのためにもっと大きな水槽を造れるようになるよ!」となんだか張り切っていらっしゃったし。私も頑張るわ。
そう決意した日の真夜中、私は突然何か不安な気持ちに襲われて目を覚ました。
ベッドの中で上半身を起こして辺りを見回すが、室内にはなんの変化もない。だけど、胸はどきどきと騒いで、不安がどんどん募ってくる。
なにかしら。この不安は。
『どうしたの?』
私の様子を見て、きんちゃんとぎょっくんが飛んでくる。
「わからない……何か、不安でたまらないの……」
私が身を震わせてそう言うと、きんちゃんとぎょっくんはぱくぱくと口を開いた。
『もしかして』
『危機察知かも』
「え……?」
危機察知、って、確か付与能力の一つだったはず。
金魚に危機が迫れば、それを感じ取ることが出来るという……
「金魚に危機が迫っている?」
まさか、皆にわけた金魚に何かあったのかしら。
私はそう思ったのだが、きんちゃんとぎょっくんはそれを否定した。
『ちがうよ。危機察知できるのは、アカリアのところにいる金魚だけなの』
『所有権が移った金魚には危機察知は働かないよ』
金魚が所有権という単語を知っていることには突っ込みたいが……いや、それより危機察知出来るのが私の所有する金魚のみということは、我が家の金魚に危機が迫っているということ?
私はベッドから抜け出して、金魚の様子を窺うために一階に降りた。
手燭に火をつけ、そろそろと廊下を歩く。どこかから、風が吹き込む音がする。
水槽を置いた部屋から、がたり、と音がした。
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