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第四章 これから先の人生はイージーモードでお願いします
家族
しおりを挟む本体は今、王都にある大神殿で目下治療中。
家族だから、皆それは知っているはず。
なのに、私がここにいるって、どう説明したらいいのよ!! ましてや、別の人間になってるなんて……説明のしようがないよね。ゼリアス様の使役になっていることは当然内緒だし。なら、「話せない」って答えるしかないでしょ。下手に嘘を吐いて、ボロを出したくないし。
義姉様が納得しようがしまいが、突き通すしかないわ。お願いだから、突っ込まないでよ。突っ込まれたら、速攻逃げるから。
そんなことを考えていた私の顔を、義姉様は真正面から見詰めると、小さく溜め息を吐いた。
「…………わかったわ。何か、理由があるのですね。深くは訊きませんわ。ただ、これだけは答えて。また、危ないことをしてはいないでしょうね?」
またって……まぁ、間違いないんだけど。言い訳できないわね。
「今回は大丈夫ですわ……」
「本当に?」
「ええ」
「なら、いいわ。ただ忘れないで、マリエールちゃん。私たちは家族なのよ」
家族か……
義姉様が言いたいことはわかる。でも、私は素直にその気持ちを受け取れない。だからつい、
「理解していますわ。安心して下さいまし、義姉様。グリード公爵家に恥じるようなことは致しませんから」
そう、突き放したような答え方をしてしまった。一線を引いてしまう。
すると、義姉様は眉を顰めた。口を開きかけたが、発することなく飲み込んでる。そうさせたのは私よね……
公爵家のことよりも私の身を案じているのだと、義姉様の目は語ってる。わかりながら、可愛くない言い方しかできない自分がほんと嫌になるわ。護衛騎士たちの視線も責められてるみたいで痛いし。
そんな中で、マリアとアインの幼児コンビが、私の両脇に立ち服を掴んでいる。やけに懐いてない? そんなに懐かれるようなことした覚えないんだけど。もしかして、私が逃げないように掴んでるの? まさか、それはないよね……
「「マリエールおねえちゃま、おなかすいちゃ」」
それ、私に言う台詞じゃないよね。何で、義姉様や護衛騎士じゃなくて私に? まぁいいけど。
「……取り敢えず、一旦、コットに戻りますか?」
連絡をとって、迎えに来てもらわないといけないしね。
「そうね。そうするわ」
即決する、義姉様。ここから少し距離はあるけど、十分に歩いて帰れる。貴族夫人なら厳しいけど。でも、あの走りをした義姉様なら大丈夫よね。マリアとアインなら、【身体強化】の魔法で十分運べるし。そうと決まれば、
「フランクさん、今は馬車は捨てた方がいいですね。馬車の周囲に野盗が潜んでいるかもしれませんから」
護衛騎士の中で一番落ち着いているフランクに提案する。
「そうですね。御者は後できちんと弔いましょう」
御者は残念なことに、亡くなったのね……
野盗はまず一番に、御者を狙う。逃げられないように、足を潰してから略奪していくのだ。
「それがいいですね。今更ですが、公爵家の人間の警護に、どうして護衛騎士が三人だけなのですか?」
さすがに不用心だわ。
コットに戻る途中、私は護衛騎士のフランクさんに尋ねた。しかし、答えたのは義姉様。
「私の父が倒れたって報せをきいて、慌てて飛んで来たのよ」
義姉様の父親がこの領地に? 自分の領地じゃなくて。よほど、この領地が気に入ってるのね。
「なるほど。ひと目孫に会わせようと馬車を飛ばしたのですね。確かに、多数ある領地の中で、グリード公爵家の領地は治安がいいことで有名ですが、危険が全くないわけではないのですよ」
どこにでも野盗はいる。あの黒光りしている虫のようにね。
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