冷遇に気づかなかったですが、ようやく離縁を決意できそうです。
名門公爵家に嫁いで二年、ヴェルネリカは一度も夫コルヴィヌスから優しい言葉をかけられたことがなかった。
寝室は別、食事も別、顔を合わせても冷たい視線だけ。だが、仕事中毒の豪商一家で育った彼女は「旦那様は激務で心に余裕がないのね」と微笑み、屋敷の過酷な差配や義母からの無理難題、夫の幼馴染からの嫌味もすべて「公爵夫人としての務め」と前向きに受け止め、完璧にこなしていた。
ところがある晩、彼女は夫と義母、幼馴染令嬢の密談を耳にしてしまう。
「あんな鈍感で無愛想な女、放っておけばよい」「愛するはずもない」と嘲笑される自分を知り、ヴェルネリカはあっけらかんと悟る。
「……あら? 私、嫌われていたのね」
冷遇されていた事実にようやく気づいた彼女は、未練も執着もなく、署名済みの離縁状を机に置いて夜明け前に姿を消した。
妻がいなくなって初めて、公爵邸が彼女一人の手腕と献身で回っていたことに気づき狂乱するコルヴィヌス。一方、遠く離れた港湾都市で実家の手腕を生かし、自由で充実した暮らしを始めたヴェルネリカの前に、彼女の才覚と人柄を心から愛する誠実な青年伯爵が現れて……。
寝室は別、食事も別、顔を合わせても冷たい視線だけ。だが、仕事中毒の豪商一家で育った彼女は「旦那様は激務で心に余裕がないのね」と微笑み、屋敷の過酷な差配や義母からの無理難題、夫の幼馴染からの嫌味もすべて「公爵夫人としての務め」と前向きに受け止め、完璧にこなしていた。
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