人魚の涙【完結】

女は、森と湖に囲まれた、亡国の姫だった。動植物と会話することが可能な巫女であったというが、それは数年ほど昔の話だ。侵略者である男に抱かれ、その能力の大半を失なってしまった女は、客観的に見て後ろ盾も居ない、ただの女でしかないはずだ。

だが、それでも男は認めざるを得なかった。
淡い水色の瞳に見詰められれば、気持ちが昂り、黒曜石の髪を撫でれば、そのまま抱きしめてしまいたくなった。

――とある男と女の話。

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