ツクモガミ乱世
――世は永明二年。すでに平成の世は遠く、これは先の世の話であり、文化は時代を遡る。
かつて日本と称されていた国はとうにない。平成と呼ばれていた時代から数百年後、国は日ノ本、時代は永明の名を冠す。
政治体制の揺らぎ、そしてのちに大禍と称された未曽有の大災害により平成の世は大きな打撃を受けた。この時代を崩壊へと至らしめたのは、しかし大禍のみではない。これには数多の異形の存在が大きく関わっていた。
地形が大きく変わり、人口が減り――そして混乱の時代の中、平成の世に突如として「ツクモガミ」と呼ばれる化生が現れ始めたのだ。
物が人間に酷似した姿に転じたもの。人々はそれらを古来より伝わる道具の化生からツクモガミと称した。
人々の中に唐突に生じたツクモガミたちは大禍に疲弊する人間たちを侵略者として襲い始めた。玩具として、下僕として、食物として。人間はさらにその数を減らし、人々は下層の立場へと追いやられた。
平成の崩壊から約三百年が経ち、時は永明。幼きころにツクモガミの急襲を受けた十握篝(とつかかがり)は、暮らしていた砦や砦の人間、唯一の家族であった妹の芙蓉(ふよう)を失った。縁あって武士となった篝だったが、元服から数年が経って戦に出るようになっても生きる希望を持てず、ツクモガミへの怒りと憎しみだけを糧に漫然とした暮らしをしていた。
唯一の家族ももうない。生きていても仕方がないが、この身を拾ってもらった手前、簡単に投げるわけにもいくまい。
悲観と諦観の中に生きていた篝だったが、主君である香々瀬尾武比古(かかせおたけひこ)の呼び出しに応じたある日、賽ノ小路六ツ目(さいのこうじむつめ)という僧形のツクモガミとの共同任務を命じられる。内心に不服を抱えながらも篝はそれを承知し、それまで出来得る限り関わりを避けていたツクモガミという存在と強制的に関わりを持つ羽目になる。
ツクモガミが憎い。そうツクモガミ全体に向ける敵愾心を篝は当初六ツ目にも向けていたが、任務を共にするうちこれまで頑なだった内心に変化が表れ始める。
六ツ目は明朗快活で、陰りがない。とても気の良い男だった。しかしそんな六ツ目は驚いたことに、自身もツクモガミでありながら深くツクモガミを憎んでいるのだった。その胸の内を明かされた篝は改めてツクモガミというものを考えるようになる。
篝はツクモガミと自身の過去にどう向き合うのか――。
かつて日本と称されていた国はとうにない。平成と呼ばれていた時代から数百年後、国は日ノ本、時代は永明の名を冠す。
政治体制の揺らぎ、そしてのちに大禍と称された未曽有の大災害により平成の世は大きな打撃を受けた。この時代を崩壊へと至らしめたのは、しかし大禍のみではない。これには数多の異形の存在が大きく関わっていた。
地形が大きく変わり、人口が減り――そして混乱の時代の中、平成の世に突如として「ツクモガミ」と呼ばれる化生が現れ始めたのだ。
物が人間に酷似した姿に転じたもの。人々はそれらを古来より伝わる道具の化生からツクモガミと称した。
人々の中に唐突に生じたツクモガミたちは大禍に疲弊する人間たちを侵略者として襲い始めた。玩具として、下僕として、食物として。人間はさらにその数を減らし、人々は下層の立場へと追いやられた。
平成の崩壊から約三百年が経ち、時は永明。幼きころにツクモガミの急襲を受けた十握篝(とつかかがり)は、暮らしていた砦や砦の人間、唯一の家族であった妹の芙蓉(ふよう)を失った。縁あって武士となった篝だったが、元服から数年が経って戦に出るようになっても生きる希望を持てず、ツクモガミへの怒りと憎しみだけを糧に漫然とした暮らしをしていた。
唯一の家族ももうない。生きていても仕方がないが、この身を拾ってもらった手前、簡単に投げるわけにもいくまい。
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ツクモガミが憎い。そうツクモガミ全体に向ける敵愾心を篝は当初六ツ目にも向けていたが、任務を共にするうちこれまで頑なだった内心に変化が表れ始める。
六ツ目は明朗快活で、陰りがない。とても気の良い男だった。しかしそんな六ツ目は驚いたことに、自身もツクモガミでありながら深くツクモガミを憎んでいるのだった。その胸の内を明かされた篝は改めてツクモガミというものを考えるようになる。
篝はツクモガミと自身の過去にどう向き合うのか――。
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