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第221話 徹夜
しおりを挟む「エイジ様……一応、嘘はありませんね」
この人物と以前に何処かで会ったような気がしたが、思い過ごしか……と、考えながら、フォルタニアは首を少し傾げる。
「恐縮です」
「あ、それはどうするので」
エイジと名乗った兵士が徐にボルスを掴みあげると、それを見たフォルタニアが質問をする。
「このゴ……ん、ん。ボルス様は私の方で部屋に戻しておきます。ご安心ください、意識は明日まで戻らないと思いますよ?」
「そうですか……ありがとうございます」
だが、まだフォルタニアの身体は震えている。余程怖かったのだろう、こんなフォルタニアは見たことがない。
「僭越ながら、朝まで部屋の外で私が見張りをしていますので、フォルタニア様はどうぞごゆっくりお休みくださいませ。ご安心ください。ハエ一匹、通しません。……っと、でも、まずこのゴミを片付けてからですね。直ぐに戻ります」
「あ、ありがとうございます」
その言葉を聞いて、フォルタニアの身体の震えがやっと収まる。
フォルタニア自身も驚く程にホッとした。
*
ゴミをゴミ箱に片付けてきた俺は、フォルタニアの部屋の前に腰かける。
(今夜は徹夜だな)
まあ、それでフォルタニアが少しでも安眠できるなら安いもんか。
窓から差し込む月明かりを浴びながら俺は思う。
こんな時だってのに星ってのは呑気なもんだよな。
*
──翌日、朝。
「おはようございます。フォルタニア様」
部屋から出てきたフォルタニアに挨拶をする。
「おはようございます。朝まで居てくださり本当に安心できました。エイジ様もそろそろお休みください」
「ハッ、では、お言葉に甘えて。失礼します」
フォルタニアに見送られた俺は本物のエイジがいる街の宿屋を目指す。
流石に眠い。1時間だけ仮眠を取るか。
と、朝から宿に入り、俺は仮眠を取ることにする。まあ、その前に本物のエイジに鎧を返さないとな。
そう言う訳で、俺はエイジのいる部屋を訪ねる。
「おい、邪魔するぞ?」
「あ、おはようございます」
「朝早くに悪いな、それと鎧返すぜ、助かったよ」
「あれ、もういいんですか?」
「ああ、もう必要ねぇ、お前も解放だ」
「ハハハ、解放って言っても、街の宿屋に泊まってただけですけどね。宿代も出して貰いましたし」
「宿代ぐらいお安いご用だ。つーか、本当に助かった、ありがとな」
「どういたしまして。では僕は朝食を食べたら王宮に戻りますね」
そう言い、エイジは部屋を出ていく。
で、俺はと言うと、隣の部屋で「1時間だけ」と、仮眠を取るのだった──
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