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第242話 勝算
しおりを挟む「西か、分かった」
俺は女王から、誰も人の居ないであろう、ウルスラとの戦いの場となる場所のヒントを得る。
「……どうやって誘導するの? そもそも相手は1000年以上前の〝天聖時代〟の産物──〝原始の黒〟よ? あの〝限界超越者〟の〝正義〟でも、封印するのが関の山だった筈、貴方に勝算はあるのかしら?」
まあ〝正義〟も、1000年以上前の人物だから、伝承は定かではないけど。と、付け足しながら、女王はウルスラのいる、上空の黒雲を忌々し気に睨む。
「勝算はどうだろうな? やってみなきゃ分からん。それにありゃ実力は魔王級だな。デフォで空飛ぶし、強い魔力を常に纏ってるし、あの馬鹿みたいなデカさなのを考えると下手したら、それ以上に厄介な相手かもしれん。後、誘導なんて面倒な真似はしねぇよ」
つーか〝原始の黒〟ってことは、他の色もいたりするのか? 後でフォルタニアにでも聞いてみるか。
「じゃあ、どうする気?」
「叩き落とすんだよ? 上から殴り飛ばしてくる」
「……そう。もし貴方にそれができるのだとしたら、少しは勝算があるのかもしれないわね。このウルスラの一件は全て貴方の判断と行動に任せるわ」
「へぇ、随分と信頼度が上がったな? それともヤケクソか?」
ついさっきまで、賊扱いだったのにな?
「半分正解よ、もう半分はフォルタニアからの貴方への信頼度が高かったからよ。あの子のあんな目は初めて見たわ」
と、その時だ──
「──GUGYAAAAAAAAAAAAA!!」
黒龍が動いた。その瞬間に強い突風が吹く。壊れかけの王宮の壁が突風に煽られ崩れていった。
あーあ、王宮の天井も壊されちまったし、これどうすんだろうな? 保険とかあるのかな? いや、異世界だと保険会社なんて商売にならなそうだな。保険で出ていく金の方が何倍もでかそうだ。
「そーいや、女王、逃げなくていいのか?」
「ええ、どうせウルスラが復活した時点で、この国に逃げ場なんてないわ。それと貴方、名前はユキマサでいいのよね?」
「ああ、フォルタニアが呼んでたろ?」
名乗らなくても、バンバンとフォルタニアが俺の名前、呼んでくれちゃってたからな。
最早、隠しようもない。隠す気も無いけど。
「それもあるけど、貴方に〝王国魔導士団〟への推薦があったのを思い出したのよ。その話しには私も一枚噛んでるの。まさか、その男が結婚式を壊しに乗り込んでくるとはね? 興味本位だけど、貴方、姓は?」
「うん? 稗月だ、稗月倖真」
「稗月ですって──? 貴方、出身は何処?」
あれ? 何か、思ってた反応と違うぞ? もっと〝何それ?〟みたいな感じだと思ったんだけどな?
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