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第246話 剣斎vs屍3
しおりを挟む──大都市エルクステン
聖教会・大聖堂──
長い黄緑色の髪のエルフの女性が青ざめた顔で立っていた。それは今しがた受け取った〝精神疎通〟の内容を聞いたからである。
扉から一人の少女が大聖堂に入ってくる。少女は青ざめ固まっている自身のお付き人に声をかける。
「ヴィクトリアさん、どうしたの?」
少女に声をかけられハッと我に返る。こうして話しかけられるまで、その少女が大聖堂に入ってきたことにヴィクトリアは気付かなかった。
「だ、大聖女様! き、緊急です!!」
「落ち着いて、一つずつ聞かせて貰えるかな?」
大慌てのヴィクトリアを優しく諭すように話す。
「すみません。取り乱しました。結論から申し上げます。エルフの国〝シルフディート〟からの報告が〝精神疎通〟であり〝八柱の大結界〟の〝魔術柱〟が魔王信仰の手によって破壊されました。敵には──〝屍〟シリュウ・ブラックを確認してまして……」
「続けてくれる?」
「は、はい。シリュウ・ブラックにより、約1000年前から〝シルフディート〟に封印されていた〝原始の黒〟──ウルスラの封印が解かれました」
「!? それは流石に想定外かな。現状戦力は?」
ノアの目が鋭く真剣になる。
「そ、それが〝シルフディート〟の国家戦力に加え──六魔導士〝剣斎〟エルルカ・アーレヤスト様、それに先の魔王戦争で魔王を討った、ユキマサ殿がいらっしゃる様子です」
「ユキマサ君の件は知ってるよ。伝言が来てたから、随分と無茶をしてるみたいだけど。ユキマサ君からの伝言のお陰でロキさんの話しも保留になってるしね」
「その件ですが、ユキマサ殿がどうやら王女誘拐犯という話が出回っており、確認を急いでます」
「あはは……あー、うん。結果だけみると、それは本当だよ。でも、私的にはユキマサ君が間違ってるとは思えないんだよね。っと、立場的にこれ以上の発言は面倒事になるかな? 聞かなかったことにしてね」
「大聖女様、どうなさいますか?」
「うん? 助けに向かうかって話だったら、その必要は無いよ。ユキマサ君とエルルカさんがいるなら〝屍〟にも〝黒龍〟にも十分に渡り合える筈、それに今から向かっても全部終わった後じゃないかな? ──まあ、だからと言って向かわない理由にはならないんだけどね? でも、今回の一件に関しては、私はユキマサ君を信じて彼に賭けようかな」
ノアは言う。何も心配は要らないと言う表情で。
*
エルフの国〝シルフディート〟
大広間・結婚式場(跡地)
フォルタニア・シルフディートは〝剣斎〟エルルカ・アーレヤストと〝屍〟シリュウ・ブラックの戦いを祈るように見ていた。
フォルタニアの目には、両者は互角、いや、エルルカがじわじわと押しているように見えた。
──だが、それはほんの一瞬の出来事だった。
轟音と爆風を立てて、何かが飛んできた。
いや、正確には飛ばされてきた。
人だ。人が飛んできた。
口からは少なくない量の血を吐いており、全身も血だらけ、恐らく骨も何本か折れている事だろう。
そんな状態で苦痛の声の一つも上げなかったのは尊敬に値する。
その大怪我のボロボロの女性が、六魔導士の一人──〝剣斎〟エルルカ・アーレヤストだと頭が気付くのに、フォルタニアは少しばかり時間がかかった。
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