生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました

第２５１話 剣斎vs屍８

「エルルカ殿、申し訳ありません！！」

　空を蹴り、アルタイルがエルルカの元へやって来る。

「責めるつもりは無いけど、下っぱの〝魔王信仰〟ぐらいは押さえておいて欲しかったわね──」

　飛びかかってくる〝魔王信仰〟の奴らを斬り伏せながら、エルルカが少しイラついたように言う。

「30秒、時間を稼ぎなさい」
「──ハッ、この身に代えても！！」

　エルルカは魔法の詠唱を始める。

『我われが求めるは・刃やいばの斬撃』

　残りの魔力的にもこの魔法が最後でしょうね。

『しばしの暇いとまを』

　残りの〝魔王信仰〟を倒してる時間も無い。
　その間に優々とシリュウに逃げられてしまう。

『ただこの時だけは瞬またたきを止め』

　ならば一か八か、纏めて吹き飛ばしてしまおう。

『鋭利な純魔をもって・愚者を切り裂かん』

　エルルカは残りの全魔力をこの一撃に込める。

「────〝螺旋金剛刃スピラヴァジュラ〟！！！！」

　斬撃の竜巻が、残りの〝魔王信仰〟の者たち全てを切り刻みながら飲み込んでいく。
　王宮に血の雨が降る。その惨劇さんげきを一同は息を呑んで見守る。

　その中でポツリポツリと声が上がる。

「やったのか！？」
「うおぉォォ！　剣斎けんさいだ！　剣斎が勝ったぞ！」
「ざまあみろ！　〝魔王信仰〟！！」

　兵士達の声を掻き分けて、エルルカの元へ走る、一人のウェディング姿の女性の姿があった。

「エルルカ様！！」

　膝をつくエルルカにフォルタニアが駆け寄る。

「フォルタニア──〝魔力回復薬マジックポーション〟を寄越しなさい。私はシリュウを追うわ、あれはまだ生・き・て・る・」
「！？　エルルカ様！　これは重度の〝魔力枯渇マジックダウン〟ですよ。すぐに動いてはダメです！」

　フォルタニアは〝魔力回復薬マジックポーション〟をエルルカに渡すが、すぐに動いてはいけないと慌てて静止する。

　強力な魔法を連発したのだ。いくらエルルカとはいえ〝魔力枯渇マジックダウン〟は免れない。しかも重度の部類だ、直ぐに適切な治療と休息、そして食事が必要だろう。

　──バタリ。

　エルルカが倒れる。

「フォルタニア、退どきなさい！」

　女王が現れる。その手には〝上魔力ハイマジック回復薬ポーション〟が握られている──ちなみにだが〝上魔力ハイマジック回復薬ポーション〟は超の付く程の稀少品だ。
　〝回復薬ポーション〟〝上回復薬ハイポーション〟〝魔力回復薬マジックポーション〟は、植・物・から作られるが〝上魔力ハイマジック回復薬ポーション〟に至っては植・物・と魔・法・によって作られる。

　生産できる者も、極々僅かだ。しかも一本作るのに相当の時間と魔力が必要となる。
　相場も高い、一本で金貨数十枚、時には百枚を越える時もあるほどだ。

　だが、女王は惜しみ無く〝上魔力ハイマジック回復薬ポーション〟をエルルカに飲ませた。

「休ませておきなさい──アルタイル、ベガ、ロゼ、貴方達は直ぐに〝屍しかばね〟を追いなさい。必ず仕留めるのよ。こんな千載一遇の機会チャンスは無いわ」

　女王の目付きも口調も冷血に近い物だ。

「「「──ハッ！！」」」

　護衛は任せなさいと言い、手を振る火澄ひすみに見送られ、三名は瞬時に動き出し、シリュウを追う──