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第358話 シナノの家7

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「あー、何だ。いっぱい食えよ。俺の奢りだ」
「シナノさん、私がお肉煮ますよ」
「はい、遠慮無く。この機を逃したら、次にお肉を食べられるの何て何年後か分かりませんから!」

 その後シナノは食べて、食べて、食べて、食べた。スープまで完飲だ。まあ、俺とクレハも食べたけど。シナノがダントツで一番に食べてたな。

「はぁぁ~! お腹いっぱい、幸せです♪」
「ご馳走さまでした」
「ご馳走さま、シナノが満足そうで何よりだ」

 俺は〝アイテムストレージ〟から、エルフ酒とさかずきを取り出す。

「あ、ユキマサ君、それお酒?」
「ノアに貰ったんだ。クレハも飲むか?」
「私はいいかな。ていうか、ノアさん。いつの間に」

「シナノはどうだ?」
「お酒ですか、飲んだこと無いです」

「飲んでみるか?」
「では、少しだけ」

 さかずきをもう一つ取り出し、シナノに渡すと、トクトクと酒を注ぐ。

「ちなみにだがシナノ、さっきの縞牛しまうし華牛はなうしの肉なんかよりも、このエルフ酒のが何十倍も高価だぜ?」

 へ? ふぇっ、と、慌てたシナノが酒を溢しそうになるが、何とかバランスを保ち、持ちこたえる。

「というか、今名前の出たノアって……〝聖教会〟の大聖女様のことじゃ無いですよね」
「うん? そのノアだが。あ、これ内緒な?」

 これは口が滑ったな。ノアに悪い。

「口止め、銀貨1枚です。と、言いたい所ですが、流石に止めておきます──あ、美味しい……!」
「ハハッ、だろ? 酒の味はあまり好きじゃない俺もこの酒の味だけは好きだと言える。そんな逸品だ」

 そんな俺とシナノの会話を聞いてクレハが不思議そうに尋ねてくる。

「ユキマサ君、お酒、嫌いなの?」
「正直、味は苦手だ。まだまだ俺も子供なのかもな。でも、酔うのは好きだ。人に迷惑はかけないつもりではいるが、酩酊めいていも嫌いじゃない」

 チビチビとは飲んでいたが、いつの間にか盃が空になってるシナノに「飲むか?」と、聞くとコクコクと頷き返してきたので、エルフ酒を注ぐ。

「悪酔いするといけないから水も飲んでおけよ」
「水ですか? 分かりました」
「あ、私、持ってくるね。ユキマサ君もいる?」

 手持ち無沙汰だったのか、クレハが水を汲みに行ってくれる。

「俺は今はいい。気にせずシナノの分だけ持ってきてやってくれ」
「うん、了解!」

 ──その後も酒が進む。これ飲みやすいんだよな。このペースだと二人で一升瓶空けちまいそうだ。
 まあ、半分以上俺が飲んでるんだけど。
 俺8でシナノ2ぐらいの割合だ。

 酔いが回ってきた、そんな時だ。
 不意にシナノが唐突に口を開いたのは。

「──私には夢があるんです」

 うん、ホント唐突。
 でも、聞こうじゃないか。酒とは夢を未来を時には過去を語り合う場だと昔親父に聞いたことがある──
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