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第365話 フェフジンテの街2
しおりを挟む「で、家をお探しでしたか?」
「ああ、心当たりあるのか?」
「とっておきの物件があります!」
ふふん、と人差し指を立てながらシナノは言う。
「今なら何と銀貨2枚で素敵な物件を紹介します!」
「有料かよ、本当に素敵なんだろうな?」
「はい。前払いで苦情は受け付けませんが」
うわぁ、怪っしい……! 通販番組見習えよ?
使用後も苦情所か返品可だぞ?
まあ、この世界に通販所かテレビすら無いけど。
「ユキマサ君、どうする?」
「ふぅ、信じてみるか。朝食に同じ釜の飯を食った仲だしな」
「じゃあ私も信じる。だからお金は半分出すよ」
銀貨を1枚渡してくるクレハ、これは断るのは失礼かと思い「ありがとう」と礼を言い俺も銀貨を1枚取り出し、合わせて銀貨2枚をシナノに渡す。
「ありがとうございます! では、こちらです!」
シナノの案内で付いていくと、街を抜け、森に入る。慣れた足取りで森を進んでいくシナノは時折、付いてきてるかな? みたいな感じでこちらを振り返る。
歩くこと20分、その場所に付いた。
現れたのは新しく綺麗な2階建ての家だ。
つーか、これ家ってより屋敷じゃん。広っ!
「いや、これは流石にデカ過ぎだ。小さいのでいいと言っただろ? 屋敷じゃねぇか、これ?」
「人の話は最後まで聞いてください。この裏です」
「裏?」
言われた通り裏に回ると──ある。
小さい家が。変哲もない普通の家だ。
大きさは大きなプレハブ小屋以上、小さな家未満程度、屋根は濃いグレー、壁は白く、屋根には煙突が出ている。大分狭そうだが二階もあるみたいだ。
「あ、おばちゃーん! 私ですシナノです!」
丁度豪邸の裏にある畑を手入れしていたらしい、腰の曲がった覇気の無い白髪の婆さんがいる。
どうやらシナノの知り合いのようだ。
笑顔で手を振り返してくれている。
「あらまあ、シナノちゃん、どうしたんだい? お友だちなんてつれて珍しいわね」
優しそうな婆さんはシナノにフレンドリーだ。
「引っ越した前のお家ってまだ残ってますか?」
「相変わらず買い手も見つからずそのままだよ」
「そうですか。実は家を探してる人がいるんですが、このお家の中を見せて貰ってもいいですか?」
すると、婆さんは優しく微笑み──
「ええ、勿論。こっちに来てくれるかい?」
俺たちを小さい方の家へと案内する。
「こちらですが。私が以前済んでいた家ですや。息子夫婦と一緒に隣に家を立ててから使っておりません。定期的に清掃も行っているので比較的綺麗かと思います」
「少し中を見せて貰っても?」
「どうぞ、ご自由に好きなだけ見ていってください。金貨60枚でお譲りいたします」
金貨60枚──600万か。
中古の小さめの家ならこんぐらいなのか?
うーん、異世界の家の相場が分からん。
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