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第431話 朝の襲撃者

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 ──翌朝。

 パチリ。俺は嫌な気配と共に目を覚ます。
 気配の先は部屋の扉の向こう側。

(綺麗に気配を消してるな)

 クレハを起こし「しっ」と口を塞ぐ。

「どうやら、客だ。招かれざる方のな──」

 ──バンッ!!

 扉が壊れんばかりに強く開かれ、中に一人の男が入ってくる。フードで顔を覆い、口当てをしており顔は全くと言っていいほど見えないが、刺すような殺意だけは嫌と言うほどに分かる。

 この侵入者の最初の行動は最低限且効率的だった。
 扉を空けた拍子に素早く俺とクレハに向け、細い毒針を放ってきた──
 毒体制は(極)レベルである俺だが、一応パシパシと毒針を叩き落とし──〝魔力銃〟で応戦と思ったが、部屋で銃撃など宿屋の迷惑になるか、いや今更かと考えながら、でも狙撃は止め、俺は拳に魔力を込める。

 敵は高そうな短剣を取り出し斬りつけて来るが、魔力を纏った拳で真正面から短剣を殴りつけ破壊する。
 目元だけしか見えない侵入者の表情が『んな、バカな!?』みたいに驚愕に染まるのがそれでも分かった。素手と短剣(多分それなりに高い奴)で素手に短剣が真っ向からボキンと折られ負けたのだ。気持ちは分からんでもない。

 そのまま俺は侵入者の首を掴み結構乱暴にドバン! と、床に叩きつける。

「がはっ」
「殺しはしねぇよ。少し寝てな、クソヤロウ──」

 叩きつけられた男は短い声と共に気を失った。

「な、何だったの!?」
「襲撃だな。恐らく職業は〝暗殺者アサシン〟賞金稼ぎの独断か何処かの国……まあ十中八九〝シルフディート〟だが。そこに雇われてかは分からん」

 さて、この殺人未遂犯はどうするかね。

 ──ポイ。

 およそ2秒にも及ぶ脳内会議の結果。
 2階の窓から道に捨てることにした。

 ゴミを道に捨てるなって?
 俺が捨てたのはゴミはゴミでもてる
 そうだ。
 ほっときゃそのうち動いてどっかいくし、ゴミの中では唯一自立ができるゴミだからな。生きゴミは。

 それにちゃんと頭を打って死んだりしないように絶妙な角度で落としてやったぜ。
 まあ、正直、向こうは理由はどうであれ命を狙って来てるんだ。あいつが死ぬ死なないの譲歩をする必要は無いんだがな。
 敵を殺そうとしていいのは、返り討ちに会い殺される覚悟のある奴だけだ。

「クレハ、少し早いが宿と街を出るぞ。俺と知って狙ってくる奴が現れた以上、もう長居はできん」
「うん、分かった。直ぐに準備するね」
「理解が早くて助かるな」

 逃亡者も楽じゃないね。ホント。
 襲撃されても、憲兵とかに頼れないんだからな。
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