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第490話 奴隷オークション3
しおりを挟む立ち上がった俺に桜が「ど、どうしたんですか!?」と、手に掴まって来る。
「──なあ、桜。取り敢えず俺ここ壊すわ」
「……!!」
と、沈黙、からの驚愕。
でも、何を言ってるか分からない様子だ。
「面倒な王族や貴族もまとめていやがるしな。片付けるなら今がチャンスだ」
まあ、勿論全員は居ないんだろうけど、それでも奴隷商を潰して販売リストみたいなのを手に出きれば売られた奴隷たちの行方の足も付く。
俺は〝アイテムストレージ〟から、一瞬で〝魔力銃〟を取り出し天井に向かって撃つ。
ドバンと当たったのはテントの支柱。その一本が壊れ、床に落ちる。結構大きめの支柱なので落ちてきた支柱が頭にでも当たれば怪我じゃ済まないだろう。
更にバンと撃つと遅れて数秒、ドスンと支柱が地面に落ちる。支柱が地面に落ちる度に王族の慌てふためく怒声が聞こえる。
あれだけ居た客たちも蜘蛛の子を散らすように逃げていく、たかが折れた支柱が落ちてきただけなのにな。
「──おやぁ、見つけましたよ。騒動の犯人を」
現れたのは20代半ば程度の黒髪の男──その姿は絵に書いたような怪盗の姿だった。黒いシルクハットに黒マントに黒いワイシャツに赤いネクタイ、おまけに仮面舞踊会のような目元を隠す黒いマスカレードマスク。俺に負けず劣らずの服装の黒率だが、それはまあいい。
「何者だ? 奴隷オークションに宝石でも盗みに来たか? だとしたら場違いだ。見なかったことにしてやるから、去りな──」
「? はて、何の話でしょうか?」
空に浮かぶ怪盗野郎は首を傾げる。
「はあ……お前は奴隷商の犬か? それとも王族の犬か?」
「犬ですか……あはは。それは良い呼び方ですね。ええ、そうです、私は前者の犬、奴隷商の犬です」
手に持つ、ステッキをくるくると回し怪盗男は先程とはうってかわって少し垢の抜けた声を発する。
「大人しくはしていただけ無いようですね?」
「お互い様だ。何のワケがあってかは知らんが邪魔するなら蹴散らしていくぞ、怪盗野郎──」
「怪盗野郎ですか、そのような奇怪な呼び方は初めてです。どうぞ──トランプとお呼びください」
「何でだろうなトランプ。俺はお前を見てると凄く悲しいんだが、何故か何処か誇らしい。そんな不思議な雰囲気をお前に感じる」
とても変な感覚だ。奴隷商の肩を担ぐような人間に誇らしいなどと、まるで矛盾する感覚を俺は感じた。
「今、間もなく、俺の手によってこの奴隷商は潰れる。──そこで提案だ。なあ、トランプ。お前、俺と来ねぇか?」
キョトンとするトランプに俺は笑いかけた。
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