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第504話 教狼と常闇
しおりを挟む王族をギロリと睨むと、忌々しげに俺を睨み返して来た。6人いる王族──その内4人は奴隷オークションのVIP席にいたやつらだ。
てか、身内でオークション争いしてたのかよ。
「──主様よ、湧いた雑魚共の片付けば終えたぞ。主様に命じられた通り殺してはおらん」
300と200は居た兵士と傭兵を物の数分で全滅させたか。思ってはいたが、強いよなコイツ。
「ご苦労さん、後は王族の首だけ──!?
──その時だ、十字架が降ってきた。
十字架が降ってきたって何だ? と思う人が大半だと思うが、文字通りだ。十字架が降ってきた。
正確には人の三倍はある巨大な十字架だ。
「おうおうおうおう、好き勝手暴れてくれんじゃねぇか!」
十字架が喋った!?
いや違う、もっと下だ。狼耳の亜人の男が十字架を持って振り回している。これはコイツの武器か?
そんなことを考えていると──
うおっ、短剣!? 飛んで来た短剣をパシッとキャッチしようとしたが毒が塗られてたので止めといた。別に毒は効きはしないがわざわざ触るものでもない。
毒付き短剣が飛んで来た方向を見ると上手く隠れた様子だが、一瞬だけ黒尽くめの暗殺者の姿が見えた、忍者とはまた違う感じだな。
「はははははは! 来たな! 我が国の最高戦力〝教狼〟バイザー・グルーリスと〝常闇〟アロ・ドットだ。この街に居れば名前ぐらい聞いたことあるだろう? 貴様らはもう終わりだ!」
どうしよう。自信満々に言ってくれてるけど全く聞いたことが無い。黒芒も頭に〝?〟を浮かべてるし。
『き、気を付けてください。実力は〝ヘッドドラゴン〟をも上回ります!』
桜から〝精神疎通〟が入る。
あー、あの人攫いの奴か。……う、うん。
そんなことを考えてると狼男のバイザーの十字架が黒芒を襲う。
巻き上がる砂埃と王族と奴隷商人の歓声。
「おうおう、ぺしゃんこだぜ!」
「はて、誰がぺしゃんこじゃ? この程度で攻撃とは、妾が封印されてる間に随分と生ぬるい世界になってるようじゃの。主様を見た時は胸が踊ったが、他は落第点じゃな。あの時代の足元にも及ばん。これじゃスカーレットの奴も気の毒じゃの」
黒芒の両手に握られた黒い扇が十字架を軽く受け止めている。当の黒芒は呆れ顔だ。いや、普通に強めの攻撃だけどな。騎士隊長ぐらいの力はあるんじゃねぇか? あと、スカーレットって誰だ?
それにあの時代? あいつには少し聞きたいことができたな。そうか、俺ってまだ黒芒のこと全然知らなかったんだな。まあ、まだ出会って数日だから当たり前っちゃ当たり前だが……
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