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第512話 処遇4

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 ノアとの通信が終わると一瞬、しん……と、辺りを静寂が包み込む。

「で、これは貰っていいんだったか? ありがたく貰っとくぜ」

 ノアの番号を登録し、俺は〝通信石〟を〝アイテムストレージ〟に仕舞う。

「〝アイテムストレージ〟までお持ちですか。底が知れませんね。それに先ほどの会話にあった〝異世界〟と言う単語、聞きたいことは山ほどありますが、今は止めておきましょう──〝ジークア王国〟の王族の方々を〝第三カルケル島〟まで護送しなくてはなりませんし、奴隷の解放もまだです」
「俺は構わんが、おいレモン、裁判はしないのか?」

「行います。ですが〝通信石〟を使った物になりますが、判断は確かな方に委ねられます」
「興味本位で聞くが誰だよそれ? 買収されたりしないだろうな? それぐらい平気でやるぞあの王族共なら」

「心配ありません。治安判事の権限を持つ〝大都市エルクステン〟の副ギルドマスターであるフォルタニアさんが判決を言い渡します」
「フォルタニアか、あいつそんな権限も持ってたんだな。まあ〝審判ジャッジ〟のスキルがあればフォルタニア以上の適役は居ないな。そっちの心配は全く無さそうだ」

「はい。そのフォルタニアさんはユキマサさん、貴方が魔の手から救ったと言っていい筈の人です。そうです、いつかの貴方の行動が無ければ。フォルタニアさんはこんな形で我々に協力はできなかった。良くて今頃、政略結婚で籠の鳥といった所でしょうか。運命とは本当にあるのかも知れませんね」

 レモンは真剣な声でそう言った。

「運命かどうだろうな。俺はまだ知らないことだ。そうだ、おい、ジューリア、お前は奴隷紋の解呪はできるか?」
「私なら可能です」
「そうか、俺もできる。手伝うぜ。効率二倍だ。さっさとあんな奴隷の呪い解いてやろう」

「分かりました。先輩様、お願いできますか?」
「ああ、任せろ」

 そんな俺とジューリアの会話を少し目を伏せて見ている人物がいた──レモンだ。

「どうした?」

 不意にそう話を投げ掛けると──
「いえ、私には解呪はできませんので、肩身が狭いと思いまして。そういった修行も〝聖教会〟の一員としては学ぶべきなのでしょうね。凄く反省です」
 クレハ以上の真面目ちゃんなのかそんな返事をしてくる。

 恐らくレモンは刀一本で〝聖教会〟の戦力第三位まで上り詰めたのだろう。血の滲むような努力もあった筈だ。

「お前はお前にできることをすればいい」
「私は剣を振るうことしかできません。その剣も貴方や〝王国魔導士団〟には遠く及びません」

「それでも俺は十分強いと思うがな。敵に回らないことを祈るよ」

 俺の言葉にシュンとしながら短く「はい」と返事を返すレモンがこの時初めて年相応に見えた。
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