「どうせお前は嫁がない」と父が言い、母が植えた私の桐の箪笥を義妹に渡したので、家を出ます
「あの箪笥はルシールにやる。どうせお前は嫁がないだろう」
北の生まれの母は、娘が生まれると、庭に桐を一本植えた。娘が十八になった春に伐り、二冬寝かせて、嫁入りの箪笥にする。北の古い習いだ。
その箪笥が、義妹の部屋に運ばれていた。北の辺境伯家へ嫁ぐ義妹は、継母の連れ子で、誰にも桐を植えてもらっていない。だから父は、姉の箪笥の名前の札だけを付け替えた。
「婚礼の支度は、これまでどおりお前が見てくれ。辺境伯家への手紙もだ」
十歳で母を亡くし、十四の年から家の帳簿を預かってきたセレストは、義妹の婚礼の段取りも、半年かけて手紙で整えてきた。父はそのあいだに届いた縁談を、「長女は家から出せない」と断っていた。
その夜、セレストは家を出ると決めた。北の母の生家には、孫娘の生まれた知らせが届いた日に祖母が植えた、もう一本の桐が立っている。
一方、王都の子爵家には、半年分の段取りの控えだけが残り、北の婚礼の作法を知る者はいなくなった。そして、半年のあいだ手紙を交わしてきた辺境伯は、急に字の変わった返事を読んで、首をかしげている。
北の婚礼では、花嫁の箪笥は式の前に婿の家へ運ばれ、婿の母が、いちばん下の引き出しの奥に職人が書いた「木の名」を読み上げる。父は、それを知らない。
北の生まれの母は、娘が生まれると、庭に桐を一本植えた。娘が十八になった春に伐り、二冬寝かせて、嫁入りの箪笥にする。北の古い習いだ。
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一方、王都の子爵家には、半年分の段取りの控えだけが残り、北の婚礼の作法を知る者はいなくなった。そして、半年のあいだ手紙を交わしてきた辺境伯は、急に字の変わった返事を読んで、首をかしげている。
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