77 / 151
誤解
しおりを挟む私と目が合ったレティアナ様。
「私がお話ししてもよろしいですか?」
「ええ、お聞きしたいです」
レティアナ様はリーストファー様とは反対側に椅子を置き座った。そして話し出した。
レティアナ様の話しでは、レティアナ様は男爵家の次女として産まれ、体が弱かったレティアナ様は幼い頃から領地で暮らしていた。
辺境の森、その森で子供の頃のリーストファー様達と出会った。平民の子供達が多い辺境では性別関係なく一緒に遊んだそう。レティアナ様は男爵家の娘だとは名乗らず、レティーと名乗った。
レティアナ様曰く、リーストファー様は『恋敵』らしい。子供の頃からリーストファー様とテオン様はいつ会っても、どこに行くにも常に離れず一緒にいたそう。
お互い年頃になり、レティアナ様はテオン様を、テオン様はレティアナ様に好意を抱くようになった。二人は恋人になり、レティアナ様と離れたくなかったテオン様は王宮軍への誘いを断り辺境へ残ったそう。そして結婚したいとお互いの両親に伝えた。
伯爵家と男爵家、身分差という程の身分差はない。それでも多少?はある。でも許容範囲だと思う。
レティアナ様の父親は伯爵家と縁が繋がると賛成した。それでも、テオン様の父親は結婚するなら伯爵家からテオン様の籍を抜き平民にすると言った。
レティアナ様の男爵家は長女が婿を取る。幼い頃に婚約して子爵家の次男が婚約者だった。
テオン様の父親は、テオン様を婿に迎えて当主にするなら婚姻を認めると言った。
レティアナ様の父親は伯爵家が他にも爵位を持っていると思っていた。
譲る爵位が無ければ平民のような生活になる。それでも、伯爵家として多少の援助はしないといけない。その多少の援助をもしたくないからと籍を抜く。当主の決定に誰も反論できない。
そうするとレティアナ様の父親も男爵家の次女として、言い方は悪いけど使える駒。貴族だけではなく、平民でも裕福な商会の嫁に、何も家名も名乗れない元貴族に嫁がせなくても、探せば嫁ぎ先はある。
それは伯爵家次男のテオン様にも言える事。婿入り先はある。
家と家の繋がりの為の婚姻
お互い親に反対され、反対されたからか二人の愛はより強くなった。
『お互い平民になって結婚しよう』
そう二人は約束をした。あのバーチェル国との戦が終わったらと。
「私も貴族の娘、清い体で婚姻する。婚姻前に体を繋げてはいけないと知っていたわ。テオンも勿論知っていた。
何年とお互いの両親に反対され続け、お父様からはテオンと会う事は許さないと言われたわ。だから私達は隠れて会っていたの。でもお父様は私の嫁ぎ先を探し始めた。だから駄目と分かっていて、私達は体を繋げたの。お父様にテオン以外とは結婚できないと、テオン以外に嫁げる体ではなくなったと、お父様が私達を認めざるを得ないように。
あの日の昼間、子が出来たとテオンに伝えた時、テオンはとても喜んでくれた。お互い平民になって結婚しようって、この戦が終わり、リーストファーが王都に帰る前に式を挙げようって。もうお互いの両親に認めてもらう事は諦めよう。俺達には俺達を祝福してくれる友がいる、それだけで良いって」
レティアナ様は私の手を握った。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい。ルイスに誤解させたのは私なの…」
俯いたレティアナ様。その手は震えていた。
「テオンが死んで、お腹の子がテオンの子だとお父様に知られたら、死んだ男の子など堕ろせって言われるわ。私はテオンの子を守れるならそれでいいって思ったの。それに、もし子を堕ろしたとしても、私に良い嫁ぎ先がある訳ないもの…」
「分かります。良くて後妻でしょう」
「私の妊娠を知ったお父様は相手は誰だと聞いてきたの、テオンかと。案の定堕ろせと言われたわ。だから私は相手は言えないと言った。相手は王都へ帰って行った人って、でもお父様は私の嘘を見破っていた。だから、どうしても産みたいなら勘当すると言われて、私は勘当された。家を出て頼る人もいない。妊娠していては働く事もできない。そもそも働いた事がないのに、これからどうしたらいいのか途方に暮れたわ。私の妊娠を知っているのはテオンと私の両親だけだったから。
テオンが死ぬなんて思ってもみなかったし、初めての妊娠で、この先の不安、自業自得よ?それでもあの当時はそんな余裕はなかったわ。一人で心細くて、誰か助けてって。その時浮かんだのがリーストファーだったの。
私はテオンの子を宿しているとリーストファーに手紙を送ったの。お父様に勘当されて、私はどうしたらいいって。そこに卑怯な考えもあったのも事実よ。リーストファーなら、テオンの子と分かれば、リーストファーなら必ず助けてくれるって。もしかしたらこの子を一緒に育ててくれるかもしれないって。お互いに愛は無くても、テオンを慕う思いはお互い強いから、テオンの子を一緒に育てる協力者のような家族にはなれるかもって。
私が悪いの。街で子供を抱っこして買い物をしていた時にルイスと偶然会って、赤子を見たルイスはとても驚いていたわ。その時、生活はどうしてるって聞かれて、リーストファーから生活費を送ってもらって生活しているって話したの。その時に『一緒にこの子を育ててくれると思ってたのに、結婚するなら仕方がないわね』ってつい言ってしまったの。その頃は私も一人で立派に育てようと思っていたから、いつもの軽口だったわ。でもルイスは違う風に捉えてしまったの。それに、子供の名前も誤解させたと思うわ」
「お子さんの名前は何と言う名ですか?」
「リースティン。テオンが決めたの。男の子ならリースティン、女の子ならリースティナ、リーストファーの名前を入れたいって言っていたから。普通自分の子に他人の名前の一部をつける?それにリースティンってテオンとリーストファーの名前をくっつけたように思えない?
私の恋敵は昔からリーストファーなの」
そう言ってレティアナ様はリーストファー様を見た。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,465
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる