勇者になんてなれない――姫君の瞳は王子を素通りする
百年前、世界を救った「閃光の勇者」ダルット・デ・ルーテは、恋人メリッサを取り戻すため、時空を越えて現代へやってくる。
だが彼が見たのは、もう二度と元の時代へ帰れないと思い込まされ、聖晶教会に囚われていた間に、別の青年へ心を寄せてしまったメリッサの姿だった。
その相手は、王立アカデミーで記録と支援に携わる青年ジークムンド・ヴァイス。
彼は病を抱え、聖晶教会に薬を人質に取られながらも、二年かけて人身売買の証拠を集め、組織崩壊の導線を作った人物だった。
しかし本人は、剣も魔法も振るえず、目の前の子どもを救えなかった自分を「勇者になんてなれない」と責め続けている。
ジークはメリッサの想いを受け止めたい一方で、愛に飢えた自分が彼女を束縛し、共に沈めてしまうことを恐れる。メリッサはそんな彼に、自分は守られるだけの弱い姫ではなく、海底都市の水の民として、溺れる彼を水底から助け上げられる存在かもしれないと告げる。
その会話を聞いたダルットは、メリッサの恋愛観が変わってしまったこと、そして自分もまた「勇者」という説明不要の記号に閉じ込められていたことを悟る。奪い返すための勇者ではなく、自分の言葉で人と向き合うため、彼は心理相談の予約を取る。
だが彼が見たのは、もう二度と元の時代へ帰れないと思い込まされ、聖晶教会に囚われていた間に、別の青年へ心を寄せてしまったメリッサの姿だった。
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