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33.断罪
しおりを挟む建国祭の日から数日が経ち、
侯爵領へ戻る準備もできた。
ラウル様が侯爵家の屋敷へ行った日、ラウル様からジュリーが私の妹では無い事、オディロンが祖父の子どもである事、そしてそのオディロンが祖父母を亡き者にした事等、バラレンド元侯爵家の闇を聞いた。
確かに祖父母は傲慢で自己愛が強い人達だったが、ここまでだったとは知らず話を聞いた時は本当に驚いた。
義母やジュリーが何かをするまでも無く、バラレンド侯爵家は崩壊の道を辿っていたのだろう…
そして私は今、王宮にいる。
義母やジュリーや父に処遇を言い渡す日だからだ。
部屋には皇子、ラウル様、私、衛兵が数名…
「フレミア、緊張していますか?」
ラウル様が私を心配して覗き込む。
「そうですね…とても…複雑な気持ちです」
「私がついていますから…」
そう言って手を握られると重たかった気持ちがスッと軽くなる。
扉がノックされる。
「入れ」
皇子が返事をすると扉が開き、手枷をした父と義母とジュリーが部屋へ入ってきた。
ジュリーがラウル様を見つけた瞬間口を開く。
「ラウル様っ!やっと迎えに来てくださったのねっ!!」
嬉々として潤んだ瞳でラウル様を見つめる。
しかし…私に気付くと…
「って…!何でフレミアお姉様がいるのよっ!!」
「口を慎め」
皇子に言われ、ジュリーは口をつぐむ。
「では…3人に刑を言い渡す。まずジュリー・バラレンドよ。お前は知らずにとは言え結果的に麻薬密売に協力した事、私に対する不敬罪により…昨年の戦争により荒地となったアレハテール地方の清掃を命じる。綺麗になり人が住めるようになるまで帰って来る事は許さない」
アレハテール地方は、
未だに手付かずで戦争の爪痕が酷く残っている…。
あの地方に人が住めるとなると…途方もない時間がかかりそうだ…。
「ちょ、ちょっと待って…嘘でしょう…?しかもアレハテール地方って凄く汚いじゃないっ!!絶対いやっ!あ!そうだわ…!」
ジュリーが私を見て狂気的に笑う…
「お姉様ぁ…お願い、また代わって…?代わりに私がラウル様と結婚しますからぁ…。所詮お姉様は私の代わりよ…?お姉様は私の代わりにラウル様の隣りにいるのだからぁ…」
この後に及んでまだこんな事を…
するとラウル様が私の肩をぐっと引き寄せる。
「お前がフレミアの代わりになどなれるものか!初めからフレミアをお前の代わりだと見た事は一度も無い!!私は…何年も前からフレミアを愛していたのだから…!!」
「ひ、ひどいっ嘘よーー!!」
絶望でその場に崩れ落ちる…
その様子に目も暮れず皇子が続ける。
「では次に元侯爵夫人ローザよ、領民を虐げた事、帳簿の不正、王族への不敬…数多の罪により、娘と共にアレハテール地方へ向かえ。そして二度と顔を見せないように」
ある意味彼女達も被害者である…
きっとラウル様が口添えしてかなり刑を軽くされているだろう…
そんな事を知ってか知らずか、義母が発狂する。
「な…納得できませんわ!そんな…そんな…やっとここまで来たのに…!!前侯爵との子どもジュリーを使ってまで…!フレミアの母まで消してまでこの地位に登り詰めたのにぃぃぃ」
…なんて愚かなの…。
ラウル様が最後の情けで黙っていた事を自ら言うなんて……。
「何だと…?」
言葉を発したのは今まで黙り込んでいた父だ。
「ローザ、お前は私の亡き妻に危害を加えていたのか…!?」
「えっ?えぇ…!そうよ!あの女がいるから坊っちゃまは私を妻にしないと思ってあの女が乗る馬車の軸を折っておいたのよ!ジュリーも貴方との子どもじゃないわ!貴方の父との子よ!貴方は何も知らなかった大馬鹿者だわ!全て…全て上手く行っていたのに…!!」
「ジュリーが私の子ではない事は分かっていた。妻亡き後、ローザを侯爵家に入れたのは、ローザも父の被害者である可哀想な女だと思ったからだ…。しかし……私の唯一愛した妻にまで危害を加えていたのならば…情けをかけた事は間違いだった…」
…知っていたのだ…。
父は、ジュリーが自分の娘では無いことを…。
そして、父なりに母を愛していたのだ…。
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