東海道品川宿あやめ屋
※ネタバレありです。
あやめ屋の”それから”。堪能させていただきました。
高弥があやめ屋に戻って最初に起きる出来事、政吉と由宇の恋のお話。互いの思い違いで進展しない二人に、高弥がきっかけを作り、ていや元助が背中を押す。
恋には疎い高弥が、恋心を抱く志津に相談したときに、志津がこう言っています。
「そんなの、いくらだって不安になるわよ」
志津の気持ちを表すかのようなこの言葉が、とても印象に残りました。
新加入の浜。人懐こくて好奇心旺盛で、大雑把でうるさい娘。
あやめ屋に波風を立てるやっかい者かと思いきや、随所でいい味を出しています。あやめ屋を明るく照らす太陽ですね。
料理が結ぶ、人の縁。健気な姉弟と団扇問屋。
どこまで本気か分からない浜のプロポーズ(?)。
藪入りでの微笑ましい親子の会話。
物語は、このまま穏やかに幸せ街道を進んでいくのかと思ったら……。
彦佐の登場は、それまでのほんわか路線を打ち砕くものでした。
もの凄く正直に申し上げると、このエピソード、早く解決してスッキリ爽やかにならないかなぁと、進行中は思っていました。
何ともツライ。何ともじれったい。
こら、平次! お前は浮かれすぎだ!
こら、元助! なぜお前はあやめ屋を去ってしまうのだ!
登場人物に文句を言っても仕方がないのですが、私の気持ちとしては、そんな感じだったわけです。
そんな中でも、高弥は頑張りました。地道に、粘り強く頑張りました。
頑張れたのは、あの二人の子供だからでしょうか。
それとも、志津に宣言をしたからでしょうか。
何にせよ、最後は彦佐が去って問題解決。ただし、単純なスッキリ爽やかではなく、ちょっと余韻の残る解決。
このあたりが、この物語のいいところですよね。と、私は思うのです。
すったもんだの後の、高弥と志津のお話。これまた、ちょっとじれったい。でも、その先にはきっと……。
「そんなの、いくらだって不安になるわよ」
いつか、志津がそのセリフを言うことがあるのだろうかと、勝手に想像してニヤニヤさせていただきました。
番外編「ある日の~」シリーズを含めて、とても楽しい読書の時間を過ごすことができました。
ありがとうございました!
ええー!Σ(゚Д゚;
まさか。ここでお終い、ではないですよね? 素晴らしい短編をお書きになる五十鈴さまと承知していても、我儘をいってしまいます。あ? 大丈夫だ、確認して来ました。小噺シリーズ、他は<了>がついてた! この先をぜひ!
「もう少し落ち着いて感想を書け」と(また)叱られそうですが。
今年も、素晴らしい読書の時間をありがとうございました! 改めて御礼申し上げます。
そ・し・て 続きを……壮助の恋の行く末を見届けさせてください♥お願いします!
?前作「中山道板橋宿つばくろ屋」ファンの私としては、「たかや」という主人公の名前を見ただけで、様々なシーンを思い出して、ちょっとじーんとしてしまいました。
強い意志をもって、荒波へと飛び込んでいく高弥。いきなり躓いて、流れ着いたその先に待っていたのは、荒波ならぬ、荒れた宿。そんな場所でも、やっぱり高弥はがんばってしまうのですね。やっぱり高弥は、あの二人の子供なんだと感じました。
流行のライトノベルであれば、父に鍛えられた「腕」を使ってあっさりと現状を打開、高弥を中心に周囲が動き出すという展開になるのかもしれませんが、この物語はそうはなりません。
登場人物の一人一人に背景があって、一人一人に想いがある。だから、簡単に何かが変わるなんてことはない。
苦悩と葛藤と挫折を繰り返しながら、少しずつ高弥が前に進んでいく。高弥だけが頑張るのではなく、いろいろな人に支えられながら進んでいく。そんな高弥に影響されて、少しずつ周りが変わっていく。
ご都合主義ではないストーリー。私の大好きなストーリーです。
丁寧に描かれる人の心。鮮やかに彩られる料理や旬の素材。幕末という時代の風と、潮の香り。そして、さりげなく、だけど深く繋がる前作の世界。すべてが自然に溶け合って、物語に立体的な広がりを見せてくれています。自身がそこに立ち、そこで呼吸をしているかのように感じさせてくれます。
社会人としての常識と状況が許してくれなかったのですが、それがなければ、確実に、徹夜で一気読みしていたと思います。本当に面白かったです。
エンディングは、ちょっと意外でした。これは……次回作もあり? なのですか!?
今作も、本当に楽しませていただきました。素敵な時間をありがとうございました!
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