夜獣は終電を待たない
改札に背中を挟まれた黒い獣が、駅員へ定期券を見せた。
八か月前まで人間だった柴崎律は、三つの眼と四本の足を持つ夜織として、もう一度暮らしを作ろうとしている。
舞台は夜になると異界の地形が重なる鳴瀬市。ビルの窓を魚が泳ぎ、団地には白い根の道が伸びる。
夜勤の面接へ向かった律は、駅の事故をきっかけに御影夜務店で働くことになった。
背の襞から伸ばせる影は二本。明かりがなければ使えない。
電気工事士の灯と技を試し、熟練の狩人に負け、奇妙な市場と凍った倉庫を渡っていく。
やがて繋がった一本の電話は、二十年前に消えた街からのものだった。
元の身体に戻りたい。それでも今の足で、行きたい場所がある。
獣として生き直した青年の現代ファンタジー。
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