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「フィオナ・クレメンス。君との婚約を破棄する」 五年間、第二王子ライナルトの論文も政策案も演説原稿も、すべて代わりに書いてきた。その結果、彼は「王国の頭脳」と讃えられ――夜会の真ん中で、可憐な義妹ミレイユの手を取った。 実家から厄介払いのように嫁がされた先は、三人の婚約者に逃げられたという北の「冷徹公爵」ジークハルト。 初夜の寝室で、彼は言った。 「君を愛することはない。三年後に離縁する。それまでは好きに過ごしてくれ」 「承知いたしました。では三年間、帳簿を見せていただけますか?」 赤字だらけの公爵領。口をきかない五歳の姪。真っ白な巨大狼。 三年後に気持ちよく出ていくため、フィオナは公爵領の立て直しを始めるのだけれど――なぜか旦那様の様子が、日に日におかしくなっていく。 一方、優秀な「代筆者」を失った王都の第二王子は、少しずつ化けの皮が剥がれ始めていた。
文字数 55,150
最終更新日 2026.11.03
登録日 2026.11.02
「修理なんて、新品を買えば済む話だろう?」 城塞都市ヴァレンの冒険者ギルドで二十年、壊れた武具をひたすら直してきた修理係のトーマ(三十八歳・万年Dランク)。 新しく来た若いギルドマスターに「無駄な経費」と言われ、彼はあっさりクビになった。 誰も知らなかった。スキル〈修繕〉は物を「作られたときの、本来の姿」に戻す力であり、ヴァレンを守る結界石を二十年支えてきたのが、このおっさんだったことを。 退職金の金貨三枚で買ったのは、魔物の森に呑まれた辺境の廃村。 崩れた家を直し、涸れた井戸を直し、村の祠に眠っていた壊れた古代ゴーレムを直したら――「おはようございます、マスター。三百年ぶりの起動です」。 ひび割れた竜の卵まで直してしまい、ふわふわの竜の子に懐かれ、行き場のない人々が集まって、廃村はいつの間にか辺境でいちばん頑丈な村になっていく。 一方そのころ、修理係を失ったヴァレンでは、剣が折れ、鎧が裂け、街を守る結界に、ひびが入り始めていた。
文字数 53,183
最終更新日 2026.11.03
登録日 2026.11.02
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