終映後の席に、花を置く
「上映は七時からです」
その声を聞いた九分後、男は映写室で倒れていた。
音声編集の仕事を失った久世灯里は、祖父の遺した海辺の映画館「白帆座」へ帰ってくる。
祖母が望むのは建物の売却。灯里の仕事は、残された物を分けることだった。
誰も座らないF7の白い花。
十七年前に町を離れた少女と、海から帰らなかった青年。
そして、最後まで作られなかった一本の映画。
幼馴染の古書店主と記録をたどるうち、灯里は気づく。
残っている声が、その人の今を語るとは限らない。
話さなかったことの全てが、誰かを欺くためとも限らない。
映画館を閉じたい祖母。亡き息子の席へ花を置く母。過去を撮ろうとする学生。
それぞれの暮らしが交わる町で、一つの声が二つの事件を繋いでいく。
音と記憶、仕事の再出発、大人たちの再会を描く長編ミステリー。
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残っている声が、その人の今を語るとは限らない。
話さなかったことの全てが、誰かを欺くためとも限らない。
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