武器装飾職人の私は、人の想いを剣に彫る。
――加護は宿りません。けれど、想いは残せます。
武器に彫っても、加護は宿らない。剣が強くなるわけでも、魔物を倒しやすくなるわけでもない。
グラナベルグの片隅の工房で、ガーネットは今日も剣に模様を彫っている。三十二歳の武具装飾職人。
麦の穂、帰り星、傷を抱く蔦――彼女が彫るのは魔法ではなく、「その人が形に残しておきたい想い」だけだった。
ある日、進捗確認を理由に、一人の年下の騎士団副官が工房へ通うようになる。
「帰ってくる隊がいいです」
その一言から始まった出会いは、他人の想いばかりを形にしてきた職人が、自分自身の想いと向き合うきっかけになっていく。
意味だけを剣に刻み続けた職人と、誰よりも人の帰りを願う騎士の、物語。
ーーーー
登場人物紹介
◆ガーネット(32歳)――武具装飾職人。
親方の工房のいちばん奥で、剣に模様を彫っている。魔法は使えない。彼女が刻むのは加護ではなく、持ち主が形に残しておきたい想いだけ。人の手や歩き方を見て、その人に似合う模様を選ぶ腕はたしかなのに、自分の年齢や体型のことになると、とたんに自信をなくす。仕事終わりの一杯が好きな、静かな職人。
◆ダグラス(29歳)――騎士団副官。
副官になったばかりの誠実な青年。人の話を最後まで聞き、部下を「全員、無事に帰す」ことに何より心を砕いている。隊の剣の相談で工房を訪れたことをきっかけに、ガーネットの仕事と、その人柄に少しずつ惹かれていく。かっこよさより、まっすぐさが先に立つ人。
武器に彫っても、加護は宿らない。剣が強くなるわけでも、魔物を倒しやすくなるわけでもない。
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親方の工房のいちばん奥で、剣に模様を彫っている。魔法は使えない。彼女が刻むのは加護ではなく、持ち主が形に残しておきたい想いだけ。人の手や歩き方を見て、その人に似合う模様を選ぶ腕はたしかなのに、自分の年齢や体型のことになると、とたんに自信をなくす。仕事終わりの一杯が好きな、静かな職人。
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副官になったばかりの誠実な青年。人の話を最後まで聞き、部下を「全員、無事に帰す」ことに何より心を砕いている。隊の剣の相談で工房を訪れたことをきっかけに、ガーネットの仕事と、その人柄に少しずつ惹かれていく。かっこよさより、まっすぐさが先に立つ人。
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