武器装飾職人の私は、人の想いを剣に彫る。
――加護は宿りません。けれど、想いは残せます。
三十二歳のガーネットは、剣や武具に模様を彫る装飾職人。
麦の穂、帰り星、傷を抱く蔦。
彫るのは魔法でも加護でもなく、持ち主が形に残しておきたい想いだけだ。
腕には自信がある。
三十二という年齢と、やわらかくなってきた自分の体のほうには、まるでない。
ある日、その工房へ、三つ年下の騎士団副官ダグラスが訪ねてきた。
隊の剣に何を刻むか尋ねると、彼は答えた。
「帰ってくる隊がいいです」
部下を一人も失いたくない。願いは、それだけ。
その日から、ダグラスは「進捗確認」を理由に工房へ通いはじめる。
「……この前も確認しませんでした?」
「しました」
「では、今日は?」
「……進捗確認です」
他人の想いなら、いくらでも形にできる。
自分に向けられた想いだけが、どう扱えばいいのかわからない。
ずっと他人のために彫ってきた職人が、自分のための一本を彫るまでの話。
――――――――――
◆ガーネット(32)
武具装飾職人。仕事の腕には自信あり、自分自身には自信なし。仕事終わりの一杯が好き。
◆ダグラス(29)
騎士団副官。「全員、無事に帰す」が信条。最近なぜか進捗確認が多い。
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三十二という年齢と、やわらかくなってきた自分の体のほうには、まるでない。
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――――――――――
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