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猫歌さんとノートの世界
しおりを挟むノートの中の猫歌さんは楽しそうに笑ったり時には泣いたりもしているけれど、やっぱり幸せが溢れていた。
○月○日
毎日学校も楽しくて猫の友達も仲良くしてくれる。猫の姿をしているのに皆食べるものは人間と同じなんだよね。それに言葉も……。
この不思議な世界は優しさと幸せがいっぱいでわたしはこの世界に転生することが出来て良かったなと思う。
前世のわたしは……確か?
えっと、何だったかな? そうだ、太郎という可愛らしい息子がいた。
『太郎という可愛らしい息子がいた』と書かれているその文字に俺の目は釘付けになった。
太郎って俺の前世での名前だよな。猫太になる前の俺の名前だ。
「猫太、どうしたんだ?」
「猫太君、どうしたの?」
これは、やっぱり猫歌さんは俺の……前世でのお母さんということだよね。俺は猫歌さんの可愛らしい横顔をじっと眺めそれからノートに視線を落とした。
「ちょっと、猫太君~」
「おい、猫太ってばノートと猫歌さんをじっと眺めてどうしたんだよ」
やっぱり猫歌さんがと考えていると誰かが俺に何かを話しかけているではないか。
「あ、えっと」
俺は、顔を上げた。すると、猫助とにゃんぴが不思議そうな顔をして俺の顔を覗き込んでいた。
「ノートに何か気になることでも書いてあったのかな?」
猫助が聞いてきた。
「あ、うん、ちょっとね……」
「どんなことだよ? 気になるよ」
「その……猫歌さんのこの文章なんだけど……」
俺は、『太郎という可愛らしい息子がいた』と書かれている文字を指差した。
その時、
「わたしがどうしたんですか?」と猫歌さんが言った。
「……それはその……前世での猫歌さんは太郎という息子がいましたか?」
俺は猫歌さんに聞いた。
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