踊り子・美月、三十二歳。相棒の辰夫と古いハイエースで、また旅に出た。
今度は東北だ。那須から大間まで、秋の東北を十二の街で縦断する。
廃業寸前の農家の夫婦、震災を生き延びた料理人、鉄の仕事を続ける職人、マグロを追う漁師。行く先々で、誰かに出会って、首を突っ込んで、火をつけて、去っていく。
「怖いだけじゃ、理由が足りない」
東北の人たちはすでに燃えていた。美月が来る前から、ずっと燃えていた。
寡黙な辰夫が、ある夜、ぽつりと言う。「こうして、あんたと旅してる」
夢貯金は今日も足りない。でも、旅は続く。
文字数 10,955
最終更新日 2026.05.09
登録日 2026.05.09