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『海風民宿の夏休み』~大病を乗り越えたわたしと、五浦のやさしい人たち~
大病の治療を終えたばかりの中学一年生、高瀬凪。
学校には戻れたものの、少し歩けば息が切れ、体育は見学。友達や家族から「無理しないで」と言われるたびに、自分だけが普通の毎日から取り残されているような気がしていた。
迎えた初めての中学の夏休み。凪は体力を取り戻すため、茨城県北茨城市の五浦で民宿「潮待ち荘」を営む叔母のもとへ預けられることになる。
東京より涼しい海辺の町。松林の向こうに広がる五浦海岸。海を見守るように建つ六角堂。温泉の湯気に、新鮮な常磐ものの魚料理。
静かに休むだけの夏になるはずだった。
ところが、久しぶりに再会した一歳年上の従兄・湊は、凪を病人扱いするどころか、初日から遠慮がない。
「元気なふりして倒れんのが、一番ごじゃっぺだかんな」
民宿の手伝いではお茶をこぼし、魚を狙う猫を追えば逆に転び、茨城弁のお年寄りとは会話がかみ合わない。港の魚屋の娘とは意地を張り合い、温泉では人に見られたくない傷痕と向き合うことになる。
笑って、怒って、ときどき泣いて。
凪は湊や地域の人々と過ごすなかで、少しずつ海辺を歩けるようになり、魚料理を食べられるようになり、疲れたときには「休みたい」と言えるようになっていく。
けれど湊にも、凪には言えない悩みがあった。
故郷を好きになり始めた凪と、いつか故郷を出たいと願う湊。
元いた場所へ戻れない少女と、生まれた場所から離れたい少年が、五浦のひと夏で見つけるものとは――。
これは、病気になる前の自分へ戻る物語ではない。
海風と温泉、あたたかな茨城弁とおいしいごはんに囲まれながら、自分の新しい歩幅を見つけていく、笑いと涙の夏休み物語。
文字数 16,850
最終更新日 2026.07.18
登録日 2026.07.18
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