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天草朱莉の嘘 ── 助けた子は、死んだことになっている

天草朱莉の嘘 ── 助けた子は、死んだことになっている
 その子は、死んだことになっている。  朱莉が、そうした。届けは出さず、火葬もせず、身内だけで葬儀をしたことにして、海の向こうへ送った。 あとは噂が勝手に「死んだらしい」を作ってくれた。  母親は、娘を亡くした母親を一生やることになる。近所にも、親戚にも、同級生にも。 「気の毒に」と言われながら、本当は生きていると知りながら、それを誰にも言えないまま。  だから、あの人の悲しみは本物だった。本当に娘を失ったから。ただ、死んだんじゃなかっただけで。  朱莉は、その嘘を一人で持っている。持っていることを、誰にも言わない。  ――誰も救われていない。一人だけ、生きている。  これは、嘘で一生を生かして、そのぶんの重さを黙って抱えた、ひとりの記録。
キャラ文芸 連載中 長編
感想数 0 文字数 73,911 最終更新日 2026.09.24 登録日 2026.09.19
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