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ファンタジー 連載中 短編
世界は、あまりにも静かだった。 争いはなく、飢えもなく、悲しみさえ管理された「完全な均衡」の世界。 そこではすべてが正しく、すべてが安全で、そして――揺れ動く感情だけが、少しずつ削ぎ落とされていった。 少年エイルは、その世界で生きるひとりだった。 彼は唯一の家族であり友であった小さなネズミ、ルゥを失う。 だがその喪失は、周囲から「些細な出来事」として扱われ、世界は何事もなかったかのように進み続ける。 泣く理由も、怒る理由も、問いかける理由も許されない――そんな均衡の中で、エイルの心だけが静かに歪み始めていく。 村人たちの言葉はどこか同じ調子で、優しささえも用意された台詞のように感じられる。 「この世界は、生きていない」 そう思った瞬間から、エイルの視界はわずかに揺れ始めた。 やがて彼は、世界の均衡を支える存在――“白の核”の噂に触れる。 それは、争いも混乱も感情の暴走さえも抑え込み、世界を永遠に「正しい形」で保つ装置。 だがその代償として、世界は痛みと共に、喜びや選択する自由までも失っていた。 旅の途中、エイルは再びルゥと出会う。 それは奇跡なのか、幻なのか、それとも世界が許してはならない“揺らぎ”なのか。 小さなネズミは言葉少なに、しかし確かにエイルの隣を歩き始める。 ネズミと少年の旅は、やがて世界の深部へと踏み込んでいく。 均衡は本当に「善」なのか。 苦しみのない世界に、意味はあるのか。 失うことを恐れ、何も選ばない生き方は、生きていると言えるのか。 これは、剣も魔法も派手な戦争もない冒険譚。 小さな命と、ひとりの少年が問い続ける、静かで残酷な世界の物語。 壊すためではなく、“揺らすため”に歩き出す旅の記録。
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文字数 16,351 最終更新日 2026.02.16 登録日 2026.01.08
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