キャラ文芸 夫婦関係 小説一覧
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義母は私に「お母さん」と呼ばせないのに、夫の幼なじみにはそう呼ばせていた
十五夜の晩、夫の圭介と幼なじみの七海は、今年も私を巻き込んで月見団子のゲームを始めた。
団子の中に硬貨を一枚隠し、それを食べた人は一人でホテルに泊まる。そんなくだらない遊びだ。
結婚して四年。毎年、その役を押しつけられるのは私だった。
今年も、硬貨が歯に当たった。鈍い痛みに顔をしかめると、ソファに座った七海が楽しそうに笑った。
「莉央って、こういうとき運がないよね。今年もホテル?」
圭介は七海の隣で、面白がるように口を挟んだ。
「悪いけど、今夜はホテルで過ごしてくれ。俺は七海と月を見たいんだ」
私は唇を噛んだ。三歳のときに両親を事故で亡くし、親戚の家を転々として育ったことも、圭介は知っている。結婚してから私が望んでいたのは、ただ自分の帰る場所を持つことだった。節目の日には家族と食卓を囲み、何気ない話をしながら過ごしたかった。
それなのに、このゲームを嫌がるたび、圭介は不機嫌になった。
「ただの遊びだろ。そんなに怒ることか?」
今年、私は言い返さず、荷物をまとめて家を出た。
マンションの下まで来たところで、寝室に妊娠の検査結果を置き忘れたことに気づいた。取りに戻り、玄関の前まで来ると、室内から義母の澄江の声が聞こえた。
「七海は気が利くわね。うちの家族にぴったりだわ。圭介には最初から、莉央なんかと結婚する必要はないって言っていたのよ。親もいない子が、うちの嫁にふさわしいわけないでしょう?」
圭介は気のない声で答えた。
「母さん、心配しなくていいよ。こうして外に出ていったんだから」
七海がくすくす笑った。
「毎年、硬貨入りの団子を莉央に渡してるのに、本人は自分が運の悪い人間だと思ってるんだもんね」
三人の笑い声が、扉越しに聞こえた。
私はスマートフォンを取り出し、病院に電話をかけた。妊娠週数を伝え、中絶について相談したいと告げる。診察の予約を済ませると、圭介に送るはずだったメッセージを消した。
圭介には、私より一緒にいたい相手がいる。
だったら、私がこの結婚にしがみつく理由もない。
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