ライト文芸 高等遊民 小説一覧
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明治が終わり、大正という時代に明けた頃。
帝国大学を出た学士でありながら、職にも家庭にも落ち着けず、本郷坂下の姉夫婦の家へ出たり戻ったりを繰り返す男がいた。
久世省吾。足に古い傷を抱え、杖をつきながら歩く、いつも不機嫌な男だった。
頭は切れる。
人の嘘も、虚栄も、善意の顔をした支配も、ひと目で見抜く。
だが、その鋭さは他人を救うより先に傷つける。
とりわけ、自分へ差し出されたいたわりや同情には、耐えられない。
だから彼は、誰かと近づきかけるたび、自らその距離を壊してしまう。
これは、帰る場所を持ちながら、なお落ち着けなかった一人の孤独な男の物語。
文字数 46,445
最終更新日 2026.04.13
登録日 2026.04.10
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