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1869年、箱館・五稜郭。
新政府軍の銃弾に倒れ、薄れゆく意識の中で、土方歳三は「ある幻」を見ていた。
それは、歴史の歯車がほんの少し掛け違えていれば確実に存在したであろう、もう一つの現実(IF)。
──もしも、あの元治元年六月五日の夜。
新選組が池田屋への到着に遅れ、長州による「京都焼き討ちと天皇拉致計画」が実行されていたら?
銃器の前に無力化された剣術。
時代遅れの亡霊。
それでも、多摩の百姓上がりであった彼らが命を削ったあの「奇跡の二時間」は確かに日本を変えた。
現実とIF。
二つの世界線で交差する土方歳三が、最後に叩きつける「泥まみれの誠」は、別の歴史だったのか。
それとも、死の間際に見せられた最悪の悪夢だったのか。
どちらにせよ、彼の答えは一つだった。
文字数 4,754
最終更新日 2026.05.08
登録日 2026.05.07
「和歌って、要するに昔の人のエモいポエムでしょ?」
そう笑う後輩・水瀬の前に、部長は一枚の札を叩きつけた。
第一番、天智天皇。
教科書が教える「農民への慈悲」という綺麗な表書きを剥ぎ取ったとき、そこに現れたのは──明日、人を殺める男が纏う「返り血」の予感だった。
百人一首、全100話完結という狂気の沙汰を経て、作者が辿り着いたさらなる深淵。
かつて100人の歌人が命を削り、喉を焼いて吐き出した言葉たちは、千年経った今もなお、生々しい熱を持って脈打っている。
「白」は、ただの雪の色ではない。それは、亡き夫に捧げる死装束の輝きだ。
「山鳥」は、ただの鳥ではない。それは、永遠に交わらぬ断絶の象徴だ。
これは、競技かるた道場を舞台に、百の言霊を解体し、再構築する物語。
甘い恋心も、目を灼く風景も、そして拭い去れぬ業も。
「綺麗」という言葉で塗りつぶされた和歌の正体を、あなたはまだ、何も知らない。
101首目の夜が、今、始まる。
文字数 3,857
最終更新日 2026.05.08
登録日 2026.05.07
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