東京ヤクルトスワローズ 髙津流マネジメント2025

村上宗隆再離脱ににじむ指揮官の苦悩……
「厳しいけれど、次の戦い方を考えていくしかない」

「8人ローテーションの意図とは?

――春季キャンプの段階では「先発投手陣が2枚しかいない」と話していました。開幕からの先発起用を見ると、いわゆる「ゆとりローテーション」というか、8人の先発投手をゆったり回しています。これは監督なりの一つの秘策というか、打開策なのでしょうか?

髙津 かなり早い段階から、「今年は8人で回そう。もしくは最低でも7人で回そう」と考えてはいました。だからこそ、「4人、5人もローテーションが足りないな」と思っていたんです。うちの先発陣はコンディションに問題がある投手が多いので、「しっかり休息を取って、きちんと間隔を空けて次の登板に備える」という方法を採る必要がある。中6日でも難しいので、「人数を増やして、間隔を空ける」という起用法は早くから考えていました。キャンプ段階では「(高橋)奎二と、吉村(貢司郎)は何とかなるかな」とは考えていたけど、それ以外になかなか名前が挙がってこなかった。だから、「足りない、足りない」と言っていたんですけどね。

――現状で言うと、4月だけで雨天中止が5試合もあったし、松山での試合による変則日程もあって、先発投手陣に関しては目論見通りにゆったりとローテーションを回せているように思えますが、この点はいかがですか?

髙津 その通りですね。だからこそ、任せるゲームについては、「1試合に対する負荷も強めに」と思っているんですけど、もう1回、もう1回と思っていると失点するケースが多いのがすごく悩ましい。結局のところ、「70~80球投げて、5~6回で交代するのが一番いいのかな」と思うこともあります。でもそうなると、その分の負担がリリーフにかかってしまう。だからこそ「先発は8人で回そう」と考えているけど、今はまた次の段階の策を練っているところです。

――「リリーフ陣への負担軽減」という意図があるからだと思いますが、高橋奎二投手が8回3安打だとか、小川泰弘投手のマダックス完投もありました。さらに、昨年までと比べると先発陣に長いイニングを任せる起用も増えています。この点も、監督の中では強く意識していることなんですか?

髙津 もちろんですよ。できればまだ4月なので、「あんまり無理をさせたくない」と思ってはいます。ただ、8人で回していること自体で無理はさせていないとも思っています。もちろん、リリーフ陣に対しても無理はさせたくないので、しっかり時間を与えた先発投手には自分が任された一つのゲームをしっかり投げてもらいたい。先発陣にはその辺を意識して、マウンドに登ってほしいです。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

髙津臣吾 /
2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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