解約率4.8%の衝撃…LINE公式パートナー唯一の「3カ国制覇」企業が見据える日本市場の勝算

 その言葉通り、同社は次のステージへと歩を進めた。

DAACとは何か――AIが「気づき、提案し、動く」

 MAACとCAACが「手足」だとすれば、DAACはその「頭脳」にあたる。

 DAAC(Data Analytical and Automation Cloud)は、MAACとCAACを通じて蓄積された顧客行動データをAIが自律的に分析し、「次に何をすべきか」を提案。さらにMAACの配信やCAACのチャット対応へと自動実行まで繋げる、いわば「AI成長エンジン」だ。

 従来、マーケターはデータを見て、会議で議論し、配信設定を行うまでに数日から1週間を要していた。DAACはそのプロセスをまるごとAIが引き受ける。過去のキャンペーンデータを学習したAIが「先月と比べて30代女性の購買率が低下しています。昨年同時期にフリースのクーポンを送ったとき回復しています。今週木曜18時に該当顧客へ配信することを推奨します」と提案し、担当者は承認ボタンを押すだけでいい。

 薛覲CEOは、こう指摘する。

「日本企業は人材不足、ノウハウの属人化、意思決定の遅さという三重苦を抱えています。DAACはその三つをまとめて解決する。AIが考え、提案し、動く。人間はジャッジするだけでいいのです」

 さらに2026年2月には、DAACに「AIネイティブCDP(Customer Data Platform)」機能の搭載を発表した。従来のCDPにAIを後付けするのではなく、開発段階からAIをコアに組み込んだ次世代データ基盤として、「収集→分析→実行」のタイムラグをゼロに近づける。日本における本格展開は2026年4月以降を予定しており、今回のラウンドテーブルでは日本初となるデモ画面が初めて公開された。

ChatGPTに絶対取れない9年分の独自データ

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 DAACの競争優位の核心は、技術ではなくデータにある。猪股唯耶日本法人代表は、こう語る。

「私たちが持っているのは、LINEのメッセージを開いたか、いつ開いたか、何をクリックしたか、その後サイトに飛んで何を見たか、このすべてが繋がったインタラクションデータです。LINEの開封データだけなら他社も持てる。しかし開封からクリック、サイト行動まで一気通貫で見えているのは私たちだけです。これをすべてDAACの学習ソースにしています」

 2017年の創業から約9年。台湾・日本・タイのLINE利用企業と消費者の間で積み上げてきたこのデータは、ChatGPTにもGeminiにも構造上取得できないものだ。今から新規参入した競合が追いつこうとしても、時間的にも技術的にも不可能だと猪股代表は断言する。

「構造上も時間上も、絶対に追いつけない。これが私たちの最大の武器です」

 さらに、薛覲CEOは言い切る。

「AIを使えば誰でもUIは作れる。これからのSaaSが生き残る唯一の道は、独自データをどれだけ保有し、それを独自のアウトプットに変えられるかにあります。私たちはその点で、誰にも負けないと思います」

転換率88.6%、解約率4.8%――日本市場で証明された勝ち筋

 クレッシェンドラボの日本戦略は明快だ。「ランドアンドエクスパンド」小さく導入し、徐々に範囲を広げていく。

 最初はLINEの1チャネルだけをフリートライアルで導入してもらう。使いやすさを実感した企業が有料契約へ移行し、SMS・Instagram・Webチャットとチャネルを広げ、MAACからCAACへ、そしてDAACへとプロダクトを拡張していく。この戦略が日本で着実に機能していることは、数字が証明している。2024年以降のトライアル導入企業の有料転換率は88.6%。解約率はSaaS業界で健全とされる5%未満を下回る4.8%。アップセル率は35.1%に達する。この驚異的な数字の背景を猪股代表はこう説明する。